普通の歯科医師なのか違うのか

口腔関連QOLは、全身の健康状態やメンタル、認知機能と関連がある

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

生活期におけるリハビリテーション・栄養・口腔管理の共働に関するケアガイドライン、という本を買って読んでいた所、気になる論文が複数あったので読んでみることにしました。最初は2008年と結構古めの論文です。結構英語が難しかったので誤訳や、意味がわかりづらい文章が多いかもしれません。

Factors associated with oral health-related quality of life in community-dwelling elderly persons with disabilities
Peter M Jensen , Ralph L Saunders, Todd Thierer, Bruce Friedman
J Am Geriatr Soc. 2008 Apr;56(4):711-7.

PMID: 18284537
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18284537/

Abstract

Objectives: To examine, in community-dwelling elderly persons with disabilities, the association between oral health-related quality of life (OHRQOL) as measured using the 14-item Oral Health Impact Profile (OHIP-14) and specific oral health, health, and disability status variables; life satisfaction; living alone; and low income.

Design: Observational cross-sectional.

Setting: A Medicare demonstration conducted in 19 counties in three states.

Participants: Six hundred forty-one disabled, cognitively intact, community-dwelling individuals aged 65 and older.

Measurements: The subjects’ OHRQOL was assessed using the OHIP-14, which was scored using three different methods. Data on oral health, health and functional status, life satisfaction, prior health services use, and sociodemographics were collected using interviewer-administered questionnaires.

Results: The participants’ mean age was 79.1, and they were dependent in an average of 1.8 activities of daily living (ADLs); 43.1% were edentulous, 77.4% wore a denture, 40.4% felt that they were currently in need of dental treatment, and 64.7% had not had a dental examination in the previous 6 months. Seven of the 16 variables of interest had significant bivariate relationships using three OHIP scoring methods. Logistic regression analysis found that poor OHRQOL was significantly associated with perceived need for dental treatment (odds ratio (OR)=2.61), poor self-rated health (OR=2.29), poor (OR=2.00) and fair (OR=1.73) mental health, fewer than 17 teeth (OR=1.74), and relatively poor cognitive functioning (OR=1.52).

Conclusion: OHRQOL is associated with some (perceived need for dental treatment, poor self-rated health, worse mental health, fewer teeth, and relatively poor cognitive status) but not all (e.g., ADL and instrumental ADL dependence) measures of oral health, health, and disability status and not with life satisfaction, living alone, or low income.

目的:障害を有する地域在住高齢者において、OHIP-14で評価した口腔関連QOL(OHRQOL)と、口腔健康状態、全身の健康、障害、満足度、独居、低収入との関連を調べる事です。

デザイン:観察横断研究

被験者:641名の障害を有し、認知機能に問題が無い、65歳地域在住高齢者

計測:3つの異なる採点方法があるOHIP-14を用いて口腔関連QOLを評価しました。口腔の健康状態、全身の健康と機能、満足度、以前の医療サービス利用状況、社会経済的情報を、質問表を用いたインタビューで収集しました。

結果:被験者の平均年齢は79.1歳で、平均1.8ADL依存しており、43.1%が無歯顎で77.4%が義歯を装着していました。40.4%は現時点で歯科治療が必要だと感じていますが、64.7%が6か月以内に歯科治療を受けていません。16変数中7つ有意な二変数の関連性を認めました。ロジスティック解析では、口腔関連QOLが悪い事は、歯科治療の必要性の認知(オッズ比2.61)、主観的健康度が悪い(オッズ比2.29)、メンタルヘルスが悪い(オッズ比2.00)、普通(オッズ比1.73)、17本以下の残存歯(オッズ比1.74)、認知機能低下(オッズ比1.52)と有意に関連していました。

結論:口腔関連QOLは、口腔健康状態、全身健康状態、障害の状態においていくつか(歯科治療の必要性の認知、主観的健康度が悪い、メンタルヘルスが悪い、歯が少ない、認知機能悪い)と関連しましたが、全てではありませんでした(例:ADL、IADL)。また、満足度や独居、収入などとも関連しませんでした。

緒言

地域在住高齢者の多くが障害を抱えています。特に、入所していない高齢者の約6%が、慢性疾患のためADL(入浴や着衣など)に制限を有しています。一方で11.5%はIADL(食事の準備、電話など)に制限を有しています。しかし、この人達の口腔関連QOLにフォーカスした研究は殆どありません。

口腔関連QOLに影響を与える主な要因は、社会経済的状態、歯科疾患、定期的な歯科受診、治療の決定意思、日常活動の低下、全身疾患の程度、口腔健康の自己認知度であると、高齢者を対象とした研究は報告しています。ある研究は、生活環境や場所が口腔関連QOLに影響すると報告していますが、他の研究では否定されています。主に施設に入所している医学的障害のある人の歯の欠損、口腔乾燥、咀嚼能力の制限などの因子は、一般的な健康状態、収入、結婚などの他の影響を調整した後に、QOLの悪化と相関する事がわかっています。

口腔の障害は、施設入所している医学的障害のある高齢者の口腔関連QOLと有意に相関します。障害を有しているが地域に住んでいる高齢者においても、この関連が成立するかは重要です。さらに、口腔関連QOLと健康、障害の関連性を検討した論文は殆どありません。著者が知る所では、口腔関連QOLとADL、IADLにより評価された障害との関連性を検討した研究は今までありません。最後に障害を有する地域在住高齢者において、口腔関連QOLと人生の満足度を検討した研究はほとんどなく、独居と口腔関連QOLとの関連もほぼエビデンスがなく、収入については意見がわれています。

本研究の目的は、OHIP-14にて評価した口腔関連QOLと、口腔の健康、全身の健康、障害、人生の満足度、収入、独居の指標との関連性を評価する事です。4つの仮説を考えました。口腔関連QOLが低い事と、口腔の健康状態、全身の健康状態、障害の状態の悪さ、人生に不満足、独居、低収入が関連しているだろうという仮説です。

実験方法

データソース

この研究では、1998年8月から2年間、ニューヨーク州、ウェストバージニア州、オハイオ州の19の郡に居住するメディケア受給者1,605人が登録され、疾病管理、消費者向けクーポン券介入、およびそれらの組み合わせの効果を検証したランダム化対照研究です。

採用基準とリクルート

被験者を307名の医師がリクルートしました。被験者はメディケアのパートA、Bに登録されている必要があり、最低でも2つのADLまたは3つのIADLについて介助が必要、地域で生活している(ナーシングホームや他の施設に入所していない)、過去12か月以内に入院経験あり、ナーシングホームの患者または入居者、またはメディケアの在宅医療を受けたことがある、または過去6ヵ月間に2回以上救急外来を受診したことがあることを条件としました。

口腔健康に関する質問

最初の参加者が約1年間実証試験に参加した後、追加助成金によって口腔健康調査票が追加されました。1605名の被験者中1101名が、口腔健康に関する質問についてベースライン時のインタビューの一部として完了しました。そのうち460名はインタビューはしたものの、研究には参加していません。そのため、本研究は641名の被験者となりました。トレーニングされた看護師がインタビューを担当しました。

42個の口腔健康に関する質問には、天然歯数、義歯装着の有無、口腔乾燥や灼熱症候群のような口腔の徴候、歯科サービスの利用、歯科サービスの認知、口腔の健康に関連する治療、例えば頭頚部腫瘍の放射線療法などに関する6つの質問が含まれています。

OHIP-14は、高い信頼性、妥当性、正確性を有し、口腔の健康が幸福感に与える影響について本人の認知を計測することができる14項目の質問で構成されます。このアンケートでは、歯、口、義歯に関する問題とと日常生活との関係や、OHIP-14の各項目が最近1か月でどのぐらいの頻度で発生したかを調査します。さらに、このアンケートには6か月以内に歯科検診を受診したかどうかという質問が追加されました。

追加の変数

社会統計学的情報

ベースライン時のインタビューで以下の情報を得ました。年齢、性別、人種、民族性、婚姻、教育、収入、生活環境、田舎か都会か、場所(ニューヨーク、ウエストバージニア、オハイオ)

健康と障害の状態

ベースライン時のインタビューで以下の情報をえました。13の慢性状態で該当する数、自己評価での健康状態、CPS(Cognitive Performance Scale)、SF-36、介助が必要なADL、IADLの数、特有の慢性状態、生活満足度、非公式介護者の情報。CPSは5つの質問からなり、意識障害、意思決定能力、意思伝達能力、短期記憶、食事の能力で構成されます。各質問にスコア0(問題なし)からスコア6(著しい機能低下)の点数をつけます。SF-36は36個の質問からなり、身体機能、メンタルヘルス、身体の健康と感情の健康が人生に与える影響、社会機能、身体の痛み、活力、全身の健康認知、健康状態の変化などで構成されます。そのうち35の質問は0(最低)~100点(最高)で評価します。

さらに、健康保険、健康に対する行動、過去の医療サービスの使用などについての情報を収集しました。

仮説

OHIP-14で評価した口腔関連QOLの悪さは、口腔健康、全身の健康、障害ステータスの悪さと関連するのではないか、という最初の仮説は、天然歯の少なさ、全部床義歯の装着、口腔乾燥、過去の頭頚部腫瘍への放射線療法、健康的な口腔を維持するための知識の欠如、歯科治療の必要性認知、歯科への長期未受診、ADL、IADLの障害、認知機能低下、健康に対する自己評価の悪さ、SF-36による身体、精神的健康の悪さなどの変数を用いて検討しました。他の3つの仮説は、満足度の低さ、独居、低収入について、単変数を用いて検討しました。

解析

OHIP-14は異なる3つの方法で計算しました。Slade’s weighted standardized scores methodologyで、1つの質問ごとに0~4で回答し、合計が0~56になる方法。シンプルな1つの質問毎に0または1をつける方法。深刻なネガティブ回答の数をカウントする方法(0~14)。3つの採点方法を用いて、従属変数が一貫した反応を示したかどうかを検証しました。

記述統計は単変量解析(平均値、中央値、標準偏差、範囲)しました。2つのタイプの相関を計算しました。両者が連続変数だった場合はPearsonの相関係数を、最低でも1つの変数がカテゴリ変数だった場合はSpearmanの順位相関係数を用いました。OHIP-14と従属変数との関連性を検討するために二変量解析を用いました。カテゴリ変数と連続変数の分散の解析のためにχ2検定を用いました。従属変数である口腔関連QOLと2変量解析でP<0.20の有意水準であった独立変数との関連を推測するために、ロジスティック回帰分析を用いました。過去に調査されたことのない母集団における問題を調査するこのような研究では、回帰モデルにおける統計的有意性のP値を0.10と高めに設定する方が好ましいです。有意でないとして、OHRQOLの悪化に関連する可能性のある因子を研究対象から除外するよりは、仮説を誤って受け入れる側(タイプIエラー)を選ぶ方が望ましいです。

結果

被験者の特性

被験者の平均年齢は79.1±7.5歳(65~100歳)で、女性が473名、73.8%、白人が615名、95.9%でした。ADLは1.8±1.5、IADLは2.9±1.6介助が必要でした。276名(43.1%)が無歯顎で、496名(77.4%)が義歯を装着していました。377名(58.8%)が頻繁に口腔乾燥を感じていました。259名(40.4%)が、現在歯科治療が必要であると考えていますが、415名(64.7%)がここ半年間歯科を受診した事がありませんでした。詳細は他の論文に記載されています。

OHIP-14との相関

OHIP-14との相関を検討した16の独立変数中、7つが統計的に有意(p<0.01)な相関を示しました(表1)。この7つは、OHIP-14の3つのカウント方法全てと有意な関係でしたが、相関係数は小さい結果でした。カウント方法1、2と最も相関を示したのは、SF-36の精神的項目スコアでした(r=-0.281、-0.284)。一方で、カウント方法3と最も相関を示したのは、治療の必要性の認知でした(r=0.241)。

未調整の二変数の関連

7つの変数について、OHIP-14の3つのカウント方法全てでp<0.01の有意な二変数の関連を認めました(表2)。OHIP-14高値による口腔関連QOLの低さは、歯科治療の必要性の認知、口腔乾燥、健康状態の自己評価の低さ、認知機能の悪さ、SF-36における身体的、精神的な状態が低値、生活満足度の低さ、と関連しました。

ロジスティック回帰分析

表3にロジスティック回帰分析の結果を示します。OHIP-14で「かなり頻繁に」と回答した項目が最低1つある場合に口腔関連QOLが低いと定義されます。その口腔関連QOLが低いことと有意に関連したのは、16変数中5つで、治療の必要性の認識(オッズ比2.61)、健康状態の自己評価の低さ(オッズ比2.29)、SF-36での精神的スコアが低い(四分位で最低)(オッズ比2.00)、やや低い(四分位で2番目の低い)(オッズ比1.73)、17本以下の天然歯数(オッズ比1.74)、認知機能の低下(オッズ比1.52)でした。χ2検定では、SF-36の精神的スコアと、健康状態の自己評価が有意に口腔関連QOLの低さと相関しました。

考察

4つの仮説のうちの3つ、生活満足度の低さ、低収入、独居が口腔関連QOLの低さと相関している、は確認されませんでした。一方、最後の1つである、口腔の健康状態、全身の健康状態の悪さ、障害の状態が口腔関連QOLの低さと相関している、は部分的に確認されました。

後者の仮説に関して、口腔健康、健康、障害の状態について13項目中5つに関して有意な関連が認められました。口腔関連QOLの低さは、歯科治療の必要性の認知、健康状態の自己評価の低さ、メンタルヘルスが悪い、天然歯数が17本以下、認知機能が低下と関連しました。口腔関連QOLのレビューでは、口腔関連QOLと一貫して関連した要素は、歯科治療の必要性の認知と、残存歯数の現象であったと結論づけています。他の研究では、口腔関連QOLの低さは、歯科治療の必要性の認知、喪失歯数の多さ、全身的な健康状態の自己評価の低さ、うつのスクリーニング検査陽性と関連しました。しかし、モラルと口腔の健康には強い相関が認められましたが、口腔の健康の自己評価と、不安、抑うつ、その他の精神症状をスクリーニングするGHQ(General Health Questionnaire)との間に有意な関連は認められませんでした。

OHI-14とADL、IADLの介助に関連がなかった解釈としては、最低2つの可能性があります。1つは、他の障害や健康問題の方が圧倒的に重要なため関連が認められなかった、もう1つは口腔のセルフケアがIADLやADLに含まれていない、という事が考えられます。

口腔関連QOLの低さは生活満足度の低さと関連するという仮説を立てましたが、今回確認できませんでした。自分の口腔の健康があまりよくないと評価する人は、自分の口は健康であると評価する人よりも生活満足度が低いという報告があります。この食い違いは、既存の慢性疾患を持つ高齢者が、口腔障害という付加的な負担に適応している可能性を示唆しています。

低収入が口腔関連QOLの低さと関連しているだろうという仮説も確認されませんでした。口腔関連QOLのと社会経済的因子が関連するという報告はいくつかあります。家計所得は、勤労世代と比較して高齢者ではそこまで重要な社会経済的因子ではありません。違った職種だったとしても同じ様な退職収入、年金等を得るからです。

最後に、独居が口腔関連QOLの低さと相関しているという期待も確認出来ませんでした。日本の研究では、独居と同居でOHIPのスコアには有意差はなかったと報告されています。

この研究で懸念されるのは、表1と表2でそれぞれ48の分析がテストされているため、I型エラーに対する十分な管理です。多くの研究者はボンフェローニ補正を使いますが、著者たちはそれが保守的すぎると感じました。P値を慣習的な値である0.05から0.01に引き下げるだけで、十分に厳密であると考えました。例えば、表2では、ボンフェローニ補正の結果、統計的有意性のP値は0.001となりました。P<0.01ではなく、この基準を用いると、3つのOHIP-14スコアリング法でそれぞれP値が0.003、0.003、0.004であったにもかかわらず、SF-36で測定された身体的健康状態の悪さは統計的に有意ではなかったことになります。地域在住高齢障害者における口腔関連QOLに関連する因子の最初の分析であると思われる本研究のような研究では、ボンフェローニ補正で生じるような因子の同定を省略するよりも、口腔関連QOLと有意に関連する因子として誤って同定する方が望ましいと思われます。統計的に有意であるとして同定を省略すると、これらの要因のさらなる研究も排除される可能性があります。

本研究にはいくつかのLimitationがあります。多くの人にとって、口腔健康質問表のインタビューをベースラインインタビュー(OHIP-14と過去6か月以内に歯科医院を受診したかどうかの質問を含む)と同時に行われたわけではなく、ベースラインインタビューから1年も経ってから行われた人もいました。被験者は障害を有する高齢者で、地域に住みながら医療サービスを利用しているため、本研究の結果は、今回の被験者のみに一般化されるかもしれません。最後に、一般的な高齢者よりも白人、女性、義歯装着者が多い被験者を用いて研究が行われました。

OHIP-14の3つのカウント方法は、過去の研究で使用されており、もし1つのみのカウント方法で解析すると結果が異なる可能性が考えられました。全てのカウント方法で同じ様な結果となったため、本結果はカウント方法に依存しなかったようです。

本研究の主な臨床的示唆は、地域在住の障害を有する高齢者では、口腔関連QOLが低い事は、天然歯数が少ないとか、歯の治療の必要性を認知しているなどの、歯科的な健康のみならず、健康状態の自己評価の低さや、メンタルヘルスの悪さ、認知機能の低下などの非歯科的な健康状態とも関連した事です。歯科医は、高齢者を治療するときにメンタルヘルスの客観的な計測法が使えるように、SF-36または、簡易的な健康状態のスクリーニングツールのトレーニングする事を考えるべきです。簡易的な認知機能のスクリーニングは歯科医院で行われるべきです。なぜなら、認知症を有する患者の1/2~2/3は、プライマリケア時には診断されておらず、認知症ケースの40~70%は、中等症~重症になってさえも本人、家族、医師は気付いていません。もし、本研究が示唆するように、認知機能低下が口腔感関連QOLの低さの潜在的なリスクファクターだとしたら、口腔の健康状態をモニターするために、歯科医師は頻繁なリコール(3~4か月毎)をこの集団に行う事を考えるべきです。う蝕や歯周病のリスクを減少させるために、クロルヘキシジンのような抗菌性洗浄剤の補助的使用や、有歯顎者の家庭でのフッ化物療法を考慮しなければいけません。

この研究結果には重要な公衆衛生的な示唆があります。潜在的に認知機能に障害のある高齢患者のスクリーニングを効果的に行うためには、メディケア、メディケイド、またはメディケアの補助保険が、SF-36と認知機能のスクリーニングを歯科給付としてカバーする必要があります。メディケアは、一部の口腔顎顔面の手術以外は歯科のサービスをカバーしていません。同様に、メディケイドでは殆どの州では大人の歯科治療は緊急時のみに限定されています。より広範な成人向け給付を行う州では、歯周病のメンテナンスなどの予防処置が年に1回認められています。今後の研究では、境界値レベルの認知機能低下のある地域在住高齢者の歯科保険適用を拡大することが、口腔関連QOLの向上につながるかどうかを評価すべきですが、本研究の結果を確認するためには、まず軽度認知障害のある対象者を対象とした研究を実施すべきです。これらの結果を確認することはとても重要です。なぜなら本研究は仮説を誤って受け入れられる側を選んだからです。

まとめ

ボンフェローニ補正については以下のサイトがわかりやすいのでご参照ください。

https://best-biostatistics.com/multiple/bonferroni.html

有意水準を下げることで、αエラーを避けるというものです。ボンフェローニ補正に基づいて有意水準を下げると検出力が下がります。今回はp<0.001という水準になってしまいます。補正せずにp<0.01とすることで、この分野では初めての研究だから検出力をできるだけ落とさないようにしたという言い方ですが、まあ有意差を出すための苦しい言い訳のような気もします。

選ばれた変数同士の交絡も微妙な感じがします。ロジスティック回帰分析で有意であった歯科治療の必要性の認知と残存歯数17本以下、というのは関連があると考えるべきではないでしょうか。というか17本以下というのはかなり恣意的な設定に感じます。母集団もかなり偏っています。無歯顎者が43%もいます。18本以上ある人は全体の何%だったのか・・・。

アメリカとは保険制度も違うので、これを今の日本の高齢者に当てはめようとするのは無理があります。私もアメリカの保険制度には詳しくないですが、メディケア・メディケイドについてはこちらをご参照ください。

https://www.medicare.gov/publications/11306-J-Medicare-Medicaid.pdf

この論文だけで色々いうのはちょっと駄目かなと思いましたが、口腔関連QOLが他の全身的な要素やメンタルと関連しているというのは、まあ納得出来る話なので、同じ様な手法のもっと新しめの論文を読んでみるべきかなと思いました。

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同大学院修了
【非常勤講師】
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