ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシンはCOVID-19に効果無し?
別の論文を読んでいましたが
別の論文を読んでいたのですが、急遽JAMAに今まで読んできたCOVID-19関連の延長線上的な論文が出てきましたので、そちらを優先して読む事にしました。
ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用療法はマラリアの治療に用いられる投与方法で、理論上それぞれ単剤でもCOVID-19に効果が期待されていました。詳しくは以下のブログで読んだ論文をご覧ください。
そして、今回JAMAにヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン投与の治癒効果に関する論文が発表されました。
Association of Treatment With Hydroxychloroquine or Azithromycin With In-Hospital Mortality in Patients With COVID-19 in New York State
JAMA. Published online May 11, 2020. doi:10.1001/jama.2020.8630
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766117
Abstract
IMPORTANCE
Hydroxychloroquine, with or without azithromycin, has been considered as a possible therapeutic agent for patients with coronavirus disease 2019 (COVID-19). However, there are limited data on efficacy and associated adverse events.
OBJECTIVE
To describe the association between use of hydroxychloroquine, with or without azithromycin, and clinical outcomes among hospital inpatients diagnosed with COVID-19.
DESIGN, SETTING, AND PARTICIPANTS
Retrospective multicenter cohort study of patients from a random sample of all admitted patients with laboratory-confirmed COVID-19 in 25 hospitals, representing 88.2%of patients with COVID-19 in the New York metropolitan region. Eligible patients were admitted for at least 24 hours between March 15 and 28, 2020. Medications, preexisting conditions, clinical measures on admission, outcomes, and adverse events were abstracted from medical records. The date of final follow-up was April 24, 2020.
EXPOSURES
Receipt of both hydroxychloroquine and azithromycin, hydroxychloroquine alone, azithromycin alone, or neither.
MAIN OUTCOMES AND MEASURES
Primary outcome was in-hospital mortality. Secondary outcomes were cardiac arrest and abnormal electrocardiogram findings (arrhythmia or QT prolongation).
RESULTS
Among 1438 hospitalized patients with a diagnosis of COVID-19 (858 [59.7%] male, median age, 63 years), those receiving hydroxychloroquine, azithromycin, or both were more likely than those not receiving either drug to have diabetes, respiratory rate >22/min, abnormal chest imaging findings, O2 saturation lower than 90%, and aspartate aminotransferase greater than 40 U/L. Overall in-hospital mortality was 20.3%(95%CI, 18.2%-22.4%). The probability of death for patients receiving hydroxychloroquine + azithromycin was 189/735 (25.7%[95%CI, 22.3%-28.9%]), hydroxychloroquine alone, 54/271 (19.9%[95%CI, 15.2%-24.7%]), azithromycin alone, 21/211 (10.0%[95%CI, 5.9%-14.0%]), and neither drug, 28/221 (12.7%[95%CI, 8.3%-17.1%]). In adjusted Cox proportional hazards models, compared with patients receiving neither drug, there were no significant differences in mortality for patients receiving hydroxychloroquine + azithromycin (HR, 1.35 [95%CI, 0.76-2.40]), hydroxychloroquine alone (HR, 1.08 [95%CI, 0.63-1.85]), or azithromycin alone (HR, 0.56 [95%CI, 0.26-1.21]). In logistic models, compared with patients receiving neither drug cardiac arrest was significantly more likely in patients receiving hydroxychloroquine + azithromycin (adjusted OR, 2.13 [95%CI, 1.12-4.05]), but not hydroxychloroquine alone (adjusted OR, 1.91 [95%CI, 0.96-3.81]) or azithromycin alone (adjusted OR, 0.64 [95%CI, 0.27-1.56]), . In adjusted logistic regression models, there were no significant differences in the relative likelihood of abnormal electrocardiogram findings.
CONCLUSIONS AND RELEVANCE
Among patients hospitalized in metropolitan New York with COVID-19, treatment with hydroxychloroquine, azithromycin, or both, compared with neither treatment, was not significantly associated with differences in in-hospital mortality. However, the interpretation of these findings may be limited by the observational design.
重要:ヒドロキシクロロキンはアジスロマイシン併用も含めてCOVID-19の治療薬として理論上可能性があると考えられていました。しかし、今回の研究結果では効果は限定的なものでした。
目的:アジスロマイシン併用または単独のヒドロキシクロロキン使用とCOVID-19罹患で入院している患者の臨床結果の関連性を検討する事です。
研究方法:後ろ向き多施設共同コホート研究であり、25の病院でCOVID-19と診断され入院している患者からランダムに抽出しています。患者の88.2%がニューヨーク都市圏の者でした。被験者は3月15日から3月28日までの間に感染が確認された患者から抽出されました。投薬、既往歴、検査値、結果、有害事象などが記録から抽出されました。この研究は4月24日まで行われました。ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用群、ヒドロキシクロロキン単体群、アジスロマイシン単体群、非投薬群の4群になります。主なアウトカムは病院での死亡です。第2のアウトカムは心停止、不整脈やQT時間延長などの心電図異常所見です。
結果:被験者は1438名のCOVID-19患者(男性858名、女性580名、年齢中央値63歳)です。投薬群は非投薬群よりも糖尿病、呼吸回数>22回/分、異常な胸部画像所見、SpO2<90%、アスパラギン酸アミノ基転移酵素>40U/Lである傾向を認めました。全体的な病院での死亡率は20.3%でした。ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用群の死亡率は189/735=25.7%、ヒドロキシクロロキン単独では54/271=19.9%、アジスロマイシン単独では21/211=10.0%、非投薬群は28/221=12.7%でした。Cox比例ハザードモデルにおいて、非投薬群と各投薬群を比較した場合、全ての投薬群の死亡率に有意差は認めませんでした。ロジスティック回帰分析においては、非投薬群と比較するとヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用群では有意に心停止のリスクがありました(オッズ比2.13)。しかし、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン単独では両者とも有意差を認めませんでした。心電図異常所見に関しては全ての群間に有意差を認めませんでした。
結論:ニューヨーク都市圏の病院に入院しているCOVID-19患者において、ヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用、または両剤単独での治療と非投薬群の成績を比較したところ、死亡率に関しては有意差は認められませんでした。しかし、この結果の解釈には限界があります。
ここからはいつものように適当に抽出して要約します。気になる方は原文の確認をお願いいたします。JAMAに登録すればフリーダウンロード可能です。
実験方法
被験者セレクト
被験者のセレクトはかなり多段階になっていて複雑です。3/15~3/28にCOVID-19罹患が確認され入院した8970人がベースで、そこから4/1時点で退院または死亡していた患者5054名からランダムに1500名を抽出、4/1の段階で入院継続で4/12の段階で退院または死亡の1994名からランダムに608名抽出、4/12の段階で入院中の患者866名から254名抽出して、そこから除外事項があるものを除外していき、最終的に1438名が残っています。
しかし、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシンの投薬はかなり治療法の選択として行われていたということなんでしょうか。後ろ向きで1438名中735名がヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンを併用されています。
投薬の選択
表2をみるとやはりヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用群はICU行きも多く、滞在日数も長い傾向にあり、より重症であるといえると思います。それに比べて他の群は比較的症状が軽いと言えるのではないかと思います。
ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン併用投与された患者はDMと肥満の傾向が強く、ヒドロキシクロロキン単体投与では慢性の肺疾患や循環系障害の既往が他軍よりも強い傾向にありました。
結果
基礎疾患等を調整した後の死亡率をCOX比例ハザードモデルで算出しています。
非投薬群と比較するとどの群も有意差はありません。しかし、アジスロマイシン単体は結構死亡率が低い感じはあります。
リスクの分析に関しても病院での死亡リスクに関しては有意差はないものの非投薬群と比較してもなぜかアジスロマイシン単独群は低い傾向が認められます。
後は心停止のリスクがやはりヒドロキシクロロキン+アジスロマイシン併用群では有意に高くなっています。これは色々な文献でも記載されていますが、両薬剤共にQT時間延長など循環器系に副作用があるものをダブルで使っているためかと思います。
アジスロマイシン単独??
アジスロマイシン単独だけなぜか死亡率が低いように見えてしまうのですが、これに関してはこの研究の限界の所で記載がありまして、交絡の可能性を示唆しています。これに関しては本当に効果があるのかは今後の研究が必要です。
for the subsample of 211 patients receiving azithromycin alone, theHR point estimate for mortality was 0.56, but the confidence interval crossed 1.0. This suggests the possibility of a true protective association, but it may also represent unmeasured confounding; it may warrant additional study.
またよく見るとアジスロマイシンのうち半数は静脈投与されています。アジスロマイシンを予防的に服用したりするエビデンスは今の所無いと考えて良いかと思います。
後ろ向きのスタディなので、研究結果を拡大評価するのは危険ですが、他の研究においてもヒドロキシクロロキンのCOVID-19に関する効果は否定的なものが多いようです。
The lack of observed benefit of hydroxychloroquine associated with in-hospital mortality, following adjustment for preexisting disease and severity of illness on admission, is consistent with recently reported data from other observational studies.17,23,24
今回はかなりさらっと目を通しただけですので深くは読んでおりませんが、かなり集団が大きいスタディで効果が否定されたことから、この投薬は下火になっていくのではないかと思います。他の薬も認可されてきていますからね。ただ、他の薬も別の疾患用の流用ですから、そのうち今回の結果のように否定されていく事になるかもしれませんね。
次からは普通の歯科の論文に戻ります。