普通の歯科医師なのか違うのか

オーラルフレイルの定義、基準がわかりやすくなりました

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

オーラルフレイルは今まで有名無実だった?

オーラルフレイルという言葉をよく耳にするようになりました。色々な媒体でも取り上げられる事も増えてきているように感じます。確かに口腔機能低下症という言葉よりも言いやすいし、フレイルの口の中版だと考えるとすっと入ってくるような感じがします。

オーラルフレイルという言葉が有名になったのは、2018年に出た柏スタディの研究ではないかと思います。当ブログでも読んでご紹介していますが、オーラルフレイルはフレイルや要介護、死亡のリスクであるという内容で、口の中の衰えが全身のフレイル、健康寿命、寿命に影響するという事を大規模な縦断研究で示しました。この論文のエビデンスにより、口の中のちょっとした衰えを改善、予防する事が重要であるという認識が一気に広まったと思います。

しかし、病名として診断基準がある程度はっきりしている口腔機能低下症と異なり、一般的に用いられているオーラルフレイルという言葉はあくまで概念であり、どうなったらオーラルフレイルなのか?といった基準が明確に設定されていませんでした。全身状態のフレイルについてはJ-CHS基準があり、ちゃんと基準値が決まっています。医科の先生方にオーラルフレイルの基準値って何なの?と聞かれた時に、これは概念であって基準はまだないんです、というと大体え??という顔をされていました。

やっと2024年4月1日に老年医学会、老年歯科医学会、サルコペニア・フレイル学会の3学会合同でオーラルフレイルの立ち位置と基準についてが発表されました。

オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメントhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/38/supplement/38_86/_article/-char/ja

オーラルフレイルの概念と定義

ステートメントの中で、オーラルフレイルは、口の機能の健常な状態(いわゆる『健口』)と『口の機能低下』との間にある状態で、オーラルフレイルは、歯の喪失や食べること、話すことに代表されるさまざまな機能の『軽微な衰え』が重複し、口の機能低下の危険性が増加しているが、改善も可能な状態である、と定義されました。

健康と機能低下の間をつなぎ、健康に戻る事ができる可逆性がある状態という形になり、これは全身のフレイルと完全に統一されたということになります。

2019年のオーラルフレイルの定義は以下の様なものでした。正直盛り込みすぎていてよく意味がわかりません。そういった意味でも今回のオーラルフレイルの定義は、全身のフレイルと共通性があり、医科の人にもわかりやすいと思います。全身のフレイルにはプレフレイルというフレイルの前段階がありますが、今回のオーラルフレイルにはそういったプレは設定されていないようです。

オーラルフレイルの概念図も一新されました。これについても以前の概念図と比較すると、フレイルの概念図に準じており、分かりやすくなっています。口の機能低下とオーラルフレイルにも可逆性があるので、口の機能低下が全身のフレイル、今回のオーラルフレイルが全身のプレフレイルに該当するイメージなのかもしれませんね。

正直2019年版の概念図では、いったいどこがオーラルフレイルなのか、どこからが口腔機能低下症の扱いなのかがよくわかりません。

OF-5

今回オーラルフレイルのスクリーニングツールとしてOF-5が設定されました。全て質問用紙への回答可能であり、検査はマストではありません。5つの質問中2つ「はい」でオーラルフレイルとなります。オーラルディアドコのt音のみ検査する可能性があります。

OF-5で地域在住高齢者の4割程度がオーラルフレイルに該当するようです。口の中のわずかな衰えなので、該当率としてはある程度問題ないのかな、と思いました。今後、このOF-5が様々な場所で使用されることでしょう。

終わりに

この新しいオーラルフレイルの定義、OF-5の導入により、オーラルフレイルと判定された高齢者が歯科医院を受診する、または高齢者健診でオーラルフレイルと判定する機会が増えるかもしれません。そこで問題なのは歯科医院側がそういったオーラルフレイルに対応できるのか?という事です。

病名として保険収載されているのは、口腔機能低下症でありオーラルフレイルではありません。オーラルフレイルと判定されても口腔機能低下症と診断されない場合はどうすればよいのでしょう?歯の疾患、欠損補綴等による対応で、後は適当に指導して終わりになってしまうのではないでしょうか。

ま、偉い人は私が考えつくようなことはもう考えていると思うので、そのうち何か指針が出てくると思います。

今後はこのステートメントに引用されているOF-5関連の論文を読んでいこうと思っています。

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