普通の歯科医師なのか違うのか

抗コリン負荷と健康関連QOLは関連がある?

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

前回の論文はなんというか不完全燃焼感があったのですが、続いての論文を読んでみたいと思います。抗コリン負荷とQOLの関連というタイトルなんですが、これは口は関係あるんでしょうか・・・。まあ読んでみることとします。

Relationship between Anticholinergic Burden and Health-Related Quality of Life among Residents in Long-Term Care
U L Aalto , H Finne-Soveri, H Kautiainen, H Öhman, H-M Roitto, K H Pitkälä
J Nutr Health Aging. 2021;25(2):224-229. doi: 10.1007/s12603-020-1493-2.
PMID: 33491038

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33491038/

Abstract

Objectives: Anticholinergic burden defined by the Anticholinergic Risk Scale (ARS) has been associated with cognitive and functional decline. Associations with health-related quality of life (HRQoL) have been scarcely studied. The aim of this study was to examine the association between anticholinergic burden and HRQoL among older people living in long-term care. Further, we investigated whether there is an interaction between ARS score and HRQoL in certain underlying conditions.

Design and participants: Cross-sectional study in 2017. Participants were older people residing in long-term care facilities (N=2474) in Helsinki.

Measurements: Data on anticholinergic burden was assessed by ARS score, nutritional status by Mini Nutritional Assessment, and HRQoL by the 15D instrument.

Results: Of the participants, 54% regularly used ARS-defined drugs, and 22% had ARS scores ≥2. Higher ARS scores were associated with better cognition, functioning, nutritional status and higher HRQoL. When viewing participants separately according to a diagnosis of dementia, nutritional status or level of dependency, HRQoL was lower among those having dementia, worse nutritional status, or being dependent on another person’s help (adjusted for age, sex, comorbidities). Significant differences within the groups according to ARS score were no longer observed. However, interactions between ARS score and dementia and dependency emerged.

Conclusion: In primary analysis there was an association between ARS score and HRQoL. However, this relationship disappeared after stratification by dementia, nutritional status and dependency. The reasons behind the interaction concerning dementia or dependency remain unclear and warrant further studies.

目的:抗コリン薬リスクスケール(ARS)により定義される抗コリン負荷は、認知、身体機能低下と関連しています。健康関連QOLとの関連は殆ど研究されていません。本研究の目的は、介護施設に住む高齢者における抗コリン負荷と健康関連QOLとの関連を検討する事です。さらに、ARSのスコアと健康関連QOLの相互作用があるかどうかについても検討しました。

デザインと被験者:2017年の横断研究です。被験者はヘルシンキの介護施設に入所している高齢者2474名です。

測定:ARSスコアによる抗コリン負荷、MNAによる栄養状態、15Dによる健康関連QOL。

結果:被験者の54%が、ARSで規定された薬剤を日常的に使用しており、22%がARSスコアが2以上でした。高いARSスコアは、良い認知機能、身体機能、栄養状態、高い健康関連QOLと関連しました。被験者を、認知症の診断、栄養状態、介護レベルにより分けて見てみると、認知症、栄養状態不良、要介護の被験者では、健康関連QOLは低い結果となりました(年齢、性別、合併症調整済み)。ARSスコアによる群内で有意差は認められませんでした。しかし、ARSスコアと認知症および介護度の間には相互作用が認められました。

結論:主解析では、ARSスコアと健康関連QOLには関連性が認められました。しかし、この関連は認知症、栄養状態、介護状態で階層化した後では消失しました。認知症または介護度についての相互作用の背後にある理由は依然として不明であり、さらなる研究が必要です。

緒言

介護施設に入所している高齢者は、人生の最後を生きています。彼らは認知機能低下、身体機能の障害、複数の基礎疾患などを有する傾向にあります。彼らの疾患は慢性的であり、そのためケアの目的はQOLを維持または改善するための緩和的なものが殆どです。健康関連QOLは、病気やその治療に関連する身体的、感情的、社会的な側面から構成されます。

介護施設に住む高齢者には、潜在的に不適切な薬物使用が広まっています。抗コリン作用を有する殆どの薬物は、アメリカ老年学会Beers基準によると潜在的不適切と考えられ、そのため、高齢者は避けるべきです。この勧告にも関わらず、抗コリン作用薬は老人ホーム入居者で頻繁に使用されています。抗コリン作用薬は、中枢、末梢神経系両方に悪い影響を与えるかもしれません。口腔乾燥、ドライアイ、便秘、めまい、認知機能低下、転倒は悪い影響の一般例です。いくつかの研究では、抗コリン負荷と身体機能低下の関連性について報告しています。最近パブリッシュされた研究では、ある抗コリン作用薬の使用が、認知症リスク上昇と関連することを示唆しています。介護施設入所高齢者では、ポリファーマシーは一般的であり、複数の抗コリン作用薬を使用するシチュエーションになりやすく、抗コリン負荷が上昇します。望ましくない副作用は、抗コリン負荷が大きくなるほど増加する傾向にあります。

高齢者における抗コリン作用薬と健康関連QOLの関連について調べた研究は殆どなく、結果は決定的ではありません。地域在住高齢者では、抗コリン作用薬使用と、SF-12、36による健康関連QOLの身体スコア低値が関連したと報告されています。認知機能低下の割合が高い、介護施設入所高齢者における研究では、抗コリン作用薬、鎮静薬への暴露は、QOLと逆相関であると報告されています。しかし、老人ホーム入居者を調べたあるアメリカの研究は、抗コリン負荷とQoLの重要な指標である活動への参加との間に関連は認められませんでした。介護施設入所高齢者における抗コリン作用薬使用は、QOLの一側面と考えられる、幸福の低下と関連するというエビデンスがあります。

トピックの重要性にも関わらず、施設入所者における抗コリン作用薬と健康関連QOLの関連については限られた研究しか存在しません。我々の仮説は、抗コリン負荷の上昇は、健康関連QOLの低下と相関するです。我々の仮説の背景にある根拠は、抗コリン作用薬の一般的な副作用が健康関連QOLの低下と相関するかもしれないということです。特に、認知症入所者は、認知機能の低下など抗コリン作用薬の弊害を受けやすいと考えられます。

本研究の目的は、ARSスコアによる抗コリン負荷と、15Dによる健康QOLの関連を検討する事です。第2の目的は、認知症、栄養状態、介護状態などの特定の状況が15DとARSの関連性に影響を及ぼすかどうかを検討する事です。

方法

高齢者向けのケア付き住宅

2017年ヘルシンキにおいて、老人ホームや高齢者向けのケア付き住宅を含む要介護施設入居者全員(3895人)を被験者に招待しました。除外基準は、拒否、認知症、インフォームドコンセントを得るための代理人がいない、としました。目的は抗コリン薬使用により上昇する負荷を調査することなので、薬を服用していない人、投薬リストが利用できない人も除外しました。除外後には被験者が2474名となりました。

訓練された登録看護師が、研究プロトコルに従って評価とインタビューを行いました。データは2017年3月に収集され、各入居者を1日かけて評価しました。投薬リストは、同日の点有病率としました。薬剤情報は被験者のカルテから抽出しました。

全ての薬剤は、解剖治療化学分類法により分類されました。日常的に使用されている薬剤のみが対象です。過去の研究で記載した通り、定期的に使用される薬剤は、定期的な投与順序が記録されているものとみなされました。そのため、症状に応じて与えられる薬剤は考慮されていません。抗コリン作用薬はARSによって定義され、抗コリン作用を有する49の一般的に使用される薬剤リストがあります。ARSは3ポイント制のランクがあります。抗コリン作用が0:効果は限定的またはない、1:中等度、2:強い、3:かなり強い、というランクです。各個人での投薬状況から、ARSスコアの総合点を総得点としました。しかし、このスコアは各個人の投与量を考慮していません。高齢者では、ARSスコアの控えめな変化でさえ、認知、身体機能低下と関連すると示唆されています。そのため、我々は被験者を、ARSで定義された抗コリン作用が全くない群(G0)から非常に強い群(G3)の4群にわけ、中等度の抗コリン負荷のある被験者も視野にいれました。ARSは、老人ホーム入居者を含む研究で使用され、認知機能、身体機能のアウトカムと相関したという報告があります。

各介護施設ごとに、人口統計学的データ、医療診断情報(急性疾患、慢性状態)などをカルテから抽出しました。

認知症の重症度はCDRの記憶項目とMMSEを用いて評価しました。CDRの記憶項目は、0:物忘れ無し、0.5:一定の微細な物忘れ、1:中等度の物忘れ、2:重度物忘れ、3:重度物忘れで断片的な記憶しかない、という5ポイント評価となります。MMSEは認知症のスクリーニングテストで、0~30点の範囲で認知機能低下の計測もできます。栄養状態はMNAで評価しました。ADLにおける介護は、CDRの介護状況項目で判定しました。これは4ポイント評価で、1:介助無し、2:激励が必要、3:着衣、衛生管理などについて管理が必要、4:日常生活に多くの介助が必要で、しばしば失禁する、というものです。3点、4点の場合要介護と考えられます。

本研究の主たるアウトカムは15Dにより判定した健康関連QOLです。これは、15個の健康状態(移動、視力、聴力、呼吸、睡眠、食事、会話、排泄、日常活動、精神機能、不快と症状、うつ、悩み、活力、性活動)について調査を行うものです。15Dは様々な集団や健康問題で使用できる検証済みのツールです。主に本人が記載するものですが、面接者や代理人による記載も可能です。各項目の最低値は0:死亡、最高が1:完全な健康という評価方法になります。

統計方法

結果は、平均値と標準偏差またはパーセントで示します。抗コリン負荷と健康関連QOLの関連を評価するために、被験者をARSスコアに応じて、以下の4群にわけました。G0群:ARS=0、G1群:ARS=1、G2群:ARS=2、G3群:ARS≧3。さらに、認知症、栄養状態、介護状態により階層化し、ARSスコアと健康関連QOLとの関係に影響があるかどうかを検討しました。

ARSスコアのカテゴリー間の直線性の未調整仮説と研究参加者の特性の統計的有意性は、コクラン・アーミテージ傾向検定、分散分析(ANOVA)、適切なコントラストを用いたロジスティック(順序)モデルを用いて評価しました。年齢、性別、チャールソン併存疾患指数で調整した後の、ARSと認知症、栄養状態、介護状態の関連を二元配置分散分析で解析しました。仮定に反する場合(例えば、非正規性)には、ブートストラップタイプの検定を用いました。変数の正規性は、グラフおよびShapiro- Wilk W検定を用いて評価しました。

結果

被験者はARSスコアにより4群に分けられました。G0群1149名、G1群768名、G2群347名、G3群210名。1149名(46%)は抗コリン作用薬を使用しておらず、ARSスコアは0(G0)でした。スコア1(G1)は31%、スコア2(G2)は14%、スコア3以上(G3)は8%でした。ARSスコアが大きいほど、若く、女性の割合が低い結果でした。ARSスコアが高い人ほど、うつ、他の精神疾患、パーキンソン病に罹患していました。ARSスコアが高いほど、多くの種類の薬剤を服用していました。ARSで定義された薬剤の数は、抗コリン負荷が大きくなるにつれて増加しました。G1での平均薬剤数は1.0、G2では1.6、G3では2.1でした。最も多くし要されていた抗コリン作用薬は、抗精神病薬(33%)、抗うつ薬(23%)でした。

1899名(77%)が認知症の診断をうけており、575名(23%)が診断を受けていませんでした。ARSスコアが大きくなるにつれて、認知症の診断を受けている被験者の割合が減少する傾向が観察されました。G0:78%、G1:82%、G2:75%、G3:56%(p<0.001)。MMSEのスコアが大きくなるほど(認知機能が良好であるほど)、ARSも大きくなる傾向が観察されました。また、CDRも認知機能低下がマイルドであるほど、ARSスコアが大きくなりました。ARSスコアが大きい入居者は、低い人よりも栄養状態がよい結果でした。介護度が減るほど、ARSスコアは大きい傾向を示しました。15Dスコアにおいても、スコアが大きいほどARSスコアが高くなりました(表1)。

認知機能、身体機能の低下が、ARSスコアと健康関連QOLの関連に影響を与えるかどうかについて検討するために、我々は、認知症、栄養状態、介護度で被験者をさらに階層化しました。ARSスコア間では、健康関連QOLに有意差は認めませんでした。全体では、認知症を有している人は、認知症ではない人と比較して15Dスコアが低く、健康関連QOLが低い事が示唆されました。低栄養リスク、低栄養の人は、栄養状態がよい人と比較して、15Dスコアが低い結果となりました。同様に、要介護の人も、介護が必要ない自立した人と比較して15Dスコアが低い結果となりました(p<0.001)。ARSスコアと認知症、ARSスコアと介護度の間に相互作用が認められ、この2群では健康関連QOLの傾向の方向性が異なることが示されました。認知症または要介護の人では、ARSスコアの増加に伴い15Dスコアが上昇しました。一方で、認知症でない、または自立した人では減少しました。栄養状態に関して、相互作用は認められませんでした(図1)。

我々は、認知症群でさらなる検討を行いました。ARSスコア0の抗コリン負荷0の人において、MMSEの平均は11.2でした。ARSスコア3以上の認知症群では、MMSEは13.7でした。認知症被験者において、負荷の殆どが向精神性と関連しており、117名中115名が向精神病薬を服用していました。抗精神病薬は溶くに一般的でした(80/117)。認知症ではない人で精神病に理解していた人が46名、脳卒中24名、パーキンソン病8名、ALS/MS7名でした。ほぼ全員に向精神薬も投与されました(92/93人)。

考察

主解析では、抗コリン負荷が高いほど、認知機能、栄養、身体機能、健康関連QOLについて良い健康状態であるという関連が示唆されました。しかし、階層化後には、ARSスコア間での健康関連QOLには有意は認められませんでした。さらに、認知症の診断、要介護度により階層化した群では、15Dスコアの傾向に驚くべき相互作用が観察されました。認知症、まはた要介護である入所者において、健康関連QOLが上昇するほど、ARSスコアも上昇する傾向が認められました。一方で、認知症、要介護ではない入所者では反対の傾向が認められました。

老人ホームにおける抗コリン作用薬の服用者は、過去の研究では48%~65%と様々でしたが、今回の結果とほぼ一致しています。ARSスコアは、服用薬剤の数の多さと関連していました。これも過去の研究で記載されています。我々は、最低でも1種類の薬剤を服用している入所者を対象しています。そのため、抗コリン作用薬の割合は、本来よりもわずかに過大評価されている可能性があります。

主解析での、抗コリン負荷が上昇するに従って健康関連QOLが上昇するという我々の知見は驚きであり、過去の研究と一致しません。従って、様々な健康状態、ARSスコア、健康関連QOLによりさらなる階層化を行いました。階層化と調整後には、ARSスコアと健康関連QOLの関連は認められませんでした。ARSスコアに関係なく、認知症、低栄養、介護度は全て健康関連QOLの低さと関連しました。これは、これらの状態が説明変数であることを示唆しています。これは、認知症の重症度がQOLの低さと関連する事を示した過去の研究と一致します。健康関連QOLと、低栄養または介護度との関連性も、過去の研究でのエビデンスにより支持されています。

ARSスコアの傾向は、認知症ありなしで異なりました。健康関連QOLに影響するのはARSスコアなのか、被験者の特性なのかを決めるのは難しいですが、被験者の特性を調べました。認知症でない人は、他の精神疾患、例えば、うつや慢性精神病などに罹患していました。さらに、彼らのほぼ全員が向精神病薬を服用していました。そのため、抗精神病薬の高い負荷が有害であるか、疾患の重症度が健康関連QOLに影響しているかのどちらかです。横断研究のため、この説明が真実であるかどうか結論づけるのは不可能です。

他方で、認知症で要介護の人では、抗コリン負荷に従って15Dスコアは上昇しました。認知症でARSスコアが高い被験者は、よい認知機能、身体機能、であり、結果として15Dスコアも高いようでした。そのため、最も重症な認知症の人は、高い抗コリン負荷を免れるかもしれません。ARSスコアが高い人の多くは、向精神病薬と抗精神病薬が与えられており、神経精神学的徴候に罹患していることが示唆されました。

今回の研究にはいくつかの強みがあります。われわれの知る限り、要介護施設入所者において、抗コリン負荷と健康関連QOL、認知症、栄養状態、機能的な要介護などの健康状態との関連、相互作用を検討した初めての研究です。被験者数は充分に多く、ヘルシンキの要介護施設高齢者を代表するものです。投薬は看護師により管理されているので、薬剤リストによる使用薬剤は信用できると考えられます。患者のカルテからのデータ収集、実際の計測などは、標準化されたプロトコルに基づいてトレーニングされた看護師により行われました。15Dは標準化され検証済みの方法であり、例えばEQ-5DやSF6Dなどの他の健康関連QOLと高い相関を示しています。

limitationとして、我々の研究は横断研究であり、コホートの範囲内での相関を報告する事のみしかできません。ARSスコアと口腔関連QOL、認知機能低下、栄養状態、介護度の間には相互作用と関連が存在しますが、因果関係について結論づけることはできません。そのため、交絡が本研究の結果の背後にある可能性を強調しなければいけません。今回の被験者には認知機能低下はよくあることであり、そのため、15Dの質問表は、主にインタビュアーまたは代理人により回答されました。健康関連QOLを代理人に回答させるのには注意が必要と過去の報告で示唆されていますが、15Dは今回の様なケースでも信頼性があると評価されています。代理人により、重度認知症患者を被験者として加えることができ、老人ホームのよりリアルな構成に近づきました。他のlimitationとして、我々は抗コリン薬リスク指標を1つしか使用していません。数多くの指標がある一方で、それらにはかなりの不一致があります。そのため、指標を変更すると結果とアウトカムが変化する可能性があります。しかし、ARSは幅広く使用されています。

結論

主解析では、ARSにより評価された抗コリン負荷と、15Dにより評価された健康関連QOLには総監が認められました。この相関は、被験者を認知症、栄養状態、介護度で階層化した場合には認められなくなりました。認知症と介護度の相互作用が観察されました。この相互作用の背後にある理由は不明です。今後のさらなる研究が必要です。

まとめ

途中から口とは全く関係なさそうだ、とわかっていましたが、ここまで読んだから全文読もう!ということで全文読みました。ただし、抗コリン薬自体は口腔乾燥など、口の中にも明確に有害事象を引き起こす事が知られています。

なかなか解釈が難しいのですが、MMSEはまったく抗コリン薬を飲んでいない群で12.7しかなく、中等度認知症レベルと考えられます。それにたいしてARS≧3の場合では16.3で有意差がありますが、薬を飲んでいる方がいい、ということになりますよね。抗コリン薬の副作用として認知機能低下があるわけですが、この結果ではむしろ認知機能が上昇してしまっています。これについては認知症の割合自体がARS分類で有意差があり、ARS=0の人では認知症が78%もいるのにARS≧3の人は56%なのでそこら辺も関連しているということになりますね。実際認知症で階層化した場合にはARSによる有意差は認められませんでした。

ARSについて調べていたら有益な資料と出会う事ができました。

日本老年薬学会の「日本版抗コリン薬リスクスケール 」公開のお知らせというページです。今回の論文の考察にもあるようにリスクスケールというのは数多く存在しており、どのスケールを使うかで結果が変わる可能性がありますし、海外と日本では発売されている薬が違うので同じスケールを当てはめる事ができません。そのため、2024年に日本老年薬学会が日本用のリスクスケールを作ったみたいです。

その中にちゃんと口腔についての記載もありました。抗コリン薬の口腔への影響を簡潔にまとめてくれていて大変有り難いです。読んでみる文献リストが増えました。この資料に出会えただけでもこの論文を読んだ甲斐があったというものです。

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【非常勤講師】
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