CADCAM冠のセメントはレジンセメントなら何でもでよい?
前回読んだ文献のリファレンスより
前回読んだ大阪大学の文献から、そのまま大阪大学のリファレンス2本をダウンロードして読む事にしました。
前回読んだ論文は以下のブログになります。
今期は歯科理工学会誌の英語版に2016年に掲載された物になります。
Bonding effectiveness of self-adhesive and conventional-type adhesive resin cements to CAD/CAM resin blocks. Part 1: Effects of sandblasting and silanization
Dental Materials Journal 2016; 35(1): 21–28
PMID: 26830821
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26830821
Abstract
The present study assessed the effect of sandblasting and silanization on resin cement bond strengths to CAD/CAM resin blocks.
Twenty four blocks (KATANA AVENCIA BLOCK) were divided into two resin cement groups (PANAVIA V5 [PV5] and PANAVIA SA CEMENT HANDMIX [PSA]), and further divided into four subgroups representing different surface treatment methods: no treatment (Ctl), silanization (Si), sandblasting (Sb), and Sb+Si. After resin application, microtensile bond strengths (μTBSs) were measured immediately, 1, 3 and 6 months after water storage. In addition, surfaces resulting from each of the treatment methods were analyzed by scanning electron microscopy (SEM). Three-way analysis of variance revealed a statistically significant effect for the parameters ‘surface treatment’ (p<0.001, F=370), ‘resin cement’ (p<0.001, F=103, PSA<PV5), and ‘water aging’ (p<0.001, F=18).
Control treatment yielded significantly lower μTBS values compared to other treatment subgroups (p<0.001). The highest bond strength was achieved with Sb+Si treatment. SEM revealed that sandblasting roughened surfaces.
本研究の目的はCADCAMレジンブロックとレジンセメントとの接着強さに対するサンドブラストとシラン処理の影響を調べることです。
カタナアベンシアをパナビアV5群とパナビアSAセメント群の2群にわけました。そしてそれぞれを接着面未処理(Ctl)、シラン処理(Si)、サンドブラスト(Sb)、シラン処理+サンドブラスト(Sb+Si)群にさらに分けました。接着操作後に接着強さを計測しました。計測は水中浸漬0、1、3、6か月後に行いました。加えて表面を電子顕微鏡でSEM画像を観察しました。3元配置分散解析による結果から、表面処理、レジンセメント、水中浸漬期間に有意差を認めました。
未処理のコントロール群は他の表面処理群と比較して有意に接着強さが弱い結果となりました。最も接着強さが高かったのはサンドブラスト+シラン処理群でした。SEM画像ではサンドブラストにより粗造化した表面を認めました。
ここからはまた適当に本文を抽出要約します。気になった方は原文をご確認いただきますようお願いいたします。
緒言
CADCAMレジン冠は審美性やコストなどの利点があります。最近の研究では今まで使用されてきた固定性補綴用レジンよりも破折に対する耐久性に優れていることが報告されています。今回の研究で使用したCADCAMレジンブロックはフィラー含有量が重量比で62%にもなります。これによりレジンセメントによる接着操作が必須、または望ましい状況になっています。また、表面処理が必須になってきています。
業者が推奨する表面処理はサンドブラストとシラン処理です。しかし、この表面処理に関してはエビデンスが十分とはいえません。また、業者は従来の接着性レジンセメントとセルフアドヒーシブセメントの両者をCADCAMレジンブロックとの接着に推奨しています。セルフアドヒーシブセメントの高い化学的物理的性質と充分な象牙質への接着力を考慮すると従来の接着性レジンセメントと同等の能力を発揮することが期待されます。
今回の研究の目的は、適切な接着操作を決定することです。
仮説は
(1)シラン処理とサンドブラスト処理はCADCAM冠レジンブロックとレジンセメントの接着に効果的ではない。
(2)接着性セメントとセルフアドヒーシブセメントで差が無い
(3)長期間の水中浸漬は接着強さに影響しない
の3つです。
実験方法
使用材料は表1に示す通りです。
前回の論文と試料作製は同じでクラレノリタケデンタルのカタナアベンシアを7×7×5mmの立体に整形して接着面を400番で耐水研磨しています。これを24個作製します。24個をまず使用するセメントで12個ずつにわけ、さらにそれぞれを表面処理4パターンにわけるので1群3つの試料ということになります。
コントロール群(Ctl):耐水研磨後にエアーで乾燥しただけのもの
シラン処理群(Si):シランカップリング剤を15秒塗布してから乾燥
サンドブラスト処理群(Sb):50μmアルミナサンドブラスト処理を15秒行った後に120秒超音波洗浄して乾燥
サンドブラスト+シラン処理(Sb+Si):サンドブラスト後にシラン処理してから乾燥
表面処理後にパナビアV5またはパナビアSAセメントを用いて接着します。セメントの厚みは2mmとなるように設定しています。両セメント共にメーカー指示の操作を行っており、20秒間光照射で重合しています。その後24時間37度の水中に浸漬します。
浸漬後に試料を32個に分割します。96個になった試料をランダムに24個ずつ、0、1、3、6か月後に接着強さを測定しています。
結果
SEM画像
研磨後のレジンブロックのSEM像では傷跡とデブリが観察されました(図4ab)。
サンドブラストはデブリが除去され表面粗さが増加しました(図4cd)。シラン処理ではデブリは除去されていませんでした(図4ef)。形態的な違いをコントロールとシラン処理群では認めませんでした。サンドブラスト処理+シラン処理群はサンドブラスト処理群に近い表面となりました。シラン処理による形態的変化は起こりませんでした。
接着強さ
3元配置分散分析の結果、表面処理、レジンセメント、水中浸漬期間の3つに統計的な有意差を認めました。パナビアV5群の方が、パナビアSA群よりも有意に大きな接着強さを認めました。
パナビアV5群では、コントロール群が他の群と比較して有意に低い接着強さを示しました。シラン処理群とサンドブラスト処理群では統計的な有意差を認めませんでした。サンドブラスト+シラン処理群は最も高い接着強さを示し、シラン処理のみ群、サンドブラストのみ群の両群と比較して有意差を認めました。
パナビアSAセメント群においてもコントロール群は他の群と比較して有意に低い接着強さを示しました。他の3群間では有意差を認めませんでした。
どちらのセメントにおいても経時的に接着強さは低下し、スタート地点である0か月と、他の測定時期には有意差を認めました。
破壊面の観察ではサンドブラスト処理、サンドブラスト+シラン処理群では接着破壊が少なく凝集破壊が他の群よりも多く認められています。コントロール群はほぼ接着破壊のみでした。
シラン処理群とサンドブラスト処理群ではサンドブラスト処理群の方が凝集破壊が多くなっています。
考察
パナビアV5とパナビアSAセメントで接着強さに有意差がどうして出たかの記載があります。
In the present study, a large number of cohesive failures in cement was observed especially in the PSA group indicating that this resin cement
was the weak link during μTBS test. The tested PSA cement contains 10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate (10-MDP), which is reported to decrease the mechanical properties of resin cements19). On the other
hand, PV5 is a conventional-type adhesive resin cement without 10-MDP and requires the pretreatment of a tooth with a primer containing 10-MDP which was not used in the present study. Moreover, PSA cement needs handmixing, possibly leading to the SEM observation that many more bubbles were incorporated into the cement (Fig. 5c). These bubbles also very likely played a role in decreasing the mechanical properties of this resin cements. Aksornmuang et al. reported that manipulation characteristics, e.g., hand-mix or auto-mix of the resin composite, could affect the strength of the material20).
読んで頂けると解りますが、SAセメントの方はレジンセメントの機械的な物性を弱くする10-MDPの含有があること、また手で練和するタイプでSEMで気泡が多く認められた事などが原因では無いかと考察しています。
引用文献20が気泡のありなしというところになります。
Aksornmuang J, Nakajima M, Foxton RM, Tagami J.Mechanical properties and bond strength of dual-cure resin composites to root canal dentin. Dent Mater 2007; 23: 226-234.
これは医科歯科の保存の論文っぽいですね。
まとめ
セルフアドヒーシブセメントは表面処理の手間がある程度省ける代わりに従来のレジンセメントと比較して接着力が弱いというデータを昔読んだことがあります。含有されているモノマーがリン酸エステルなのか、カルボン酸系なのか、などによっても性質が異なります。
何か便利になると言うことは何かを捨てている可能性もあるわけでそれが接着強さとしたら問題ですよね。自分もメインはセルフアドヒーシブセメント使っているのでちょっとこれは反省です。
自分が何系を使っているのか等添付文書を読んで確認してみようと思いました。
また、従来型のレジンセメントも使えるようにしようか、と考えはじめました。
ただし、最近のセメントのデータをしっかりみていないので、文献を探して確認しないといけないなと思った次第です。
とりあえずこの文献から言える事は
CADCAM冠のような高フィラー高重合度の材料で
ここは強い接着力が欲しい、外れたら困る、と言う場合
1)表面処理+通常の接着性レジンセメントを選択する
2)手練りでなくオートミックスタイプを選択する
ということが重要のようです。