普通の歯科医師なのか違うのか

毎日行う嚥下体操は効果がある

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

毎日訓練を行う効果は?

前回のブログでは藤島式嚥下体操セットを食前に行った場合1か月で咽頭期を主体とした摂食嚥下障害の自覚症状が減少する、という論文を読みました。

しかし、そういった訓練を行った効果というのは他にも色々検討されているようなので、さらに論文を読んでみることとしました。少し古いですが、2008年の昭和大学からの論文です。

日常的に行う口腔機能訓練による高齢者の口腔機能向上への効果
大岡貴史,拝野 俊之,弘中 祥司, 向井 美恵
口腔衛会誌58:88-94,2008.

ダウンロードフリーです。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh/58/2/58_KJ00004917185/_article/-char/ja/

抄録

口腔機能は、摂食・嚥下機能や構音機能など、生活の質の維持・向上、コミュニケーションをはじめとした社会生活を営むうえで重要な役割を担っている。本研究では、在宅高齢者の機能減退に伴う摂食・嚥下機能および構音機能の低下に対して、機能低下の進行を予防するために高齢者自身が行える口腔機能向上における新たな介護予防システムを構築することを目的に、口腔体操が口腔機能の向上に与える効果を検討した。特定高齢者および要支援高齢者計23名(男性4名、女性19名、平均年齢77.9±6.5歳)を対象として、器具を用いない口腔体操および口腔ケアを含む口腔機能向上プログラムを自宅にて約3ヵ月継続して実施した。この介入前後に摂食・嚥下機能および構音機能の改善効果について評価を行い、口腔機能の変化について検討を行った。その結果、口唇閉鎖力および音節交互反復運動の回数に著明な改善がみられた。また、反復唾液嚥下テスト(RSST)においては、介入前の評価で3回の嚥下が行えなかった対象者で明らかな嚥下回数の向上が認められ、初回嚥下までの時間も有意に短縮された。これらより、特定高齢者および要支援高齢者が自宅にて日常的に行える簡便な口腔体操の実践により、摂食・嚥下機能、構音機能をはじめとした口腔機能の向上が得られる可能性が示唆された。

実験方法

被験者

口腔機能向上プログラムの継続および口腔機能評価が可能であった特定高齢者および要支援高齢者計23名(男性4名、女性19名、平均年齢77.9±6.5歳)。

9名は天然歯のみで上下臼歯部の咬合が成立、14面は片側あるいは上下顎臼歯部に義歯を装着していました。

口腔機能向上プログラム

まず事前に摂食嚥下機能に関する評価を行った後に口腔体操を指導しています。

口腔体操は1日3回行い、2週間ごとに「お口の健康教室」を開催して、再度口腔体操の指導と口腔清掃状態の評価を行っています。

最終的に2週間のクールを6セット、12週行った後に事後評価として再度摂食嚥下機能評価を行っています。

口腔機能向上プログラムは
①首の体操
②口の開閉
③唇の体操
④舌の体操
⑤頬の膨らまし
⑥発声
⑦咳嗽
の7つのパートとなります。おそらく全部行うには10分弱という感じかと思います。

測定項目

測定項目は以下の4項目です。

最大口唇圧:リットレメータ使用
音節交互反復運動:パタカを可能な限り速く反復 5秒間の回数を測定
RSST:3回以上と3回未満で分類
FT:お粥4g使用

結果

口唇閉鎖力:有意に増加

音節交互反復運動:パタカ全てにおいて有意に増加

RSST:3回以上と未満の構成に関してはχ2検定にて有意差は認められませんでした。介入前にRSSTが3回未満の被験者群は介入後に有意にRSSTの回数が増加しました。元々3回以上の被験者群では有意差は認めませんでした。RSSTにおける初回嚥下までの時間についても3回未満の被験者群で有意な短縮が認められました。

FTに関しては有意差を認めませんでした。

まとめ

今回、古い論文のため舌圧を計測していませんが、タカ音で舌機能を推定できると思います。RSST3回未満の意味というのは案外難しいのですが、送りこみ障害で感度80.4%、特異度53.8%、誤嚥で98.1%、65.8%となっています。ということで口腔と咽頭を総合的に判断した様な形になります。

誤嚥のリスクや舌機能低下の複合はフレイル、サルコペニア、要介護状態、死亡に影響する事が柏市における研究で報告されています。

今回の被験者ではRSSTがかなり悪い被験者も含まれているようですが、普段食べている食形態に関して記載がないため、実際どれぐらいのレベルなのかかが分かりづらいですが、FTでほぼ全員が4点以上なのである程度の経口摂取が可能な群であると想定されます。

そういったある意味混合された被験者の中で、こういったそれほど難しくない体操でも口腔周囲の機能を改善するのに役に立つ結果になった、というのは非常に重要かと思います。特にRSSTが悪い人が有意に改善するというのはある程度障害があると判断される人でも自主練でよくなる可能性があるということです。また、RSSTが元々3回以上の人でも3か月とは言え機能が維持されています。訓練無し群と比較したわけではありませんが、自主練の継続による効果が期待できるのかもしれません。

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東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
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