普通の歯科医師なのか違うのか

ガムを噛みながら試験勉強で成績アップはエビデンスがある

2020/09/22
 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

ガムを噛む効果の論文は沢山ある

前回、正常有歯顎者でガム咀嚼のトレーニングを行うと舌圧と頬圧が有意に増加し、トレーニング終了後にも効果が持続するという論文を読みました。

これをよんで、私も毎日ガム咀嚼のトレーニングをしています。

関連して咀嚼訓練のエビデンスについて調べてみたのですが、全然引っかかってこないのです。むしろガム咀嚼の効果に関する研究はかなりの数あると言う事が分かりまして、その中から自分が面白そうなやつを何本か読む事にしました。

Effect of chewing gum on stress, anxiety, depression, self-focused attention, and academic success: A randomized controlled study
Şengül Yaman-Sözbir, Sultan Ayaz-Alkaya, Burcu Bayrak-Kahraman 
Stress Health. 2019 Oct;35(4):441-446
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31125164/
PMID: 31125164

Abstract

Chewing gum is thought to increase focus via a reduction in stress and anxiety. Chewing gum contributes to success by improving short-term memory. This study was conducted to determine the effect of chewing gum on stress, anxiety, depression, self-focused attention, and exam success. A randomized controlled trial was conducted with a total of 100 students. In the long-term (19 days) and short-term (7 days) chewing gum groups, the pretest scores of depression, anxiety, and stress were significantly higher than the posttest scores. Although the posttest scores on the self-focused attention subscale were higher than the pretest scores in long-term chewing gum group, there was no significant difference between the pretest and posttest scores in this group. The academic success mean scores of the long-term experimental group students were higher than those of the other groups. Students are recommended to chew gum before exams in order to overcome exam stress and to enhance exam success. However, chewing gum is not recommended in the long term for students who have difficulty focussing their attention.

ガムを噛むことはストレスと不安の軽減することにより注目を浴びていると考えられます。ガムを噛むことは短期記憶の改善にも寄与します。本研究はガムを噛むことによるストレス、不安、うつ、自己注目、試験に対する効果を決定することを目的としました。100名の学生に対してRCTを行いました。19日間の長期ガム咀嚼群と7日間の短期ガム咀嚼群において、うつ,不安、ストレスに関する項目では期間終了後のスコアが開始前よりも有意に高い結果となりました。自己注目のスコアに関して、長期咀嚼群では終了後のスコアは開始前より高くなったものの、両者に有意差は認められませんでした。長期咀嚼群におけるacademic success mean scoresは他の群よりも高くなりました。試験前に成績向上とストレス克服のためにガムを噛むことが推奨されます。しかし、長期的に注意を集中させることが困難な学生にはチューインガムは推奨されません。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

Smithは習慣的にガムを噛む人々はストレスが少ないと報告しています。また、チューインガムは不安の軽減と関連するという報告もあります。またストレスの軽減も報告されています。しかし、軽減しなかったという報告もあります。

SmithとWoodsはガム咀嚼の量の効果としてストレスの軽減認識を報告しています。Scholeyらはチューインガムは有意な注意力の向上と不安、ストレス、唾液中のコルチゾールの減少と関連すると報告しています。ガムを噛んだ群は全体的なパフォーマンスが向上しました。大学教育で試験は教育上重要なプロセスです。試験への不安は強い感情で試験前に身体的心理的な変化を起こし、試験中のパフォーマンスに負の影響を与えるかもしれません。教育の最も早期な時期から看護学生も自分のパフォーマンスやQOLに影響を与えるストレス要因に直面します。

 集中力、注意力を高め不安やストレスを軽減する方法の1つにチューインガムがあります(2010年ぐらいで4つほど参考文献有り)。チューインガムのストレス軽減効果に関する神経的なメカニズムには視床下部-下垂体-副腎系と自律神経系活動に影響する前頭前皮質が含まれます。Kamiyaらは前頭前皮質の高活動性が
背側ラフェヌクレウスにおけるセロトニン作動性ニューロンの活動性増加と屈曲反射の低下を惹起する事を報告しました。

パラフィンワックスを噛ませることにより急性心理的ストレス因子のマーカーとしての唾液中のコルチゾールが減少する事が最近報告されました。そのため、チューインガムは急性のストレスが負荷されている間の気分に一貫してポジティブな影響を与えました。結局チューインガムは外部ストレス要素の感覚入力の減少と脳のストレス関連情報の維持の抑制に関与している様です。

チューインガムにより脳の微小血管における血流量が増加し、セロトニン作動性ニューロンの賦活化するのかもしれません。したがって、うつ病の患者にチューインガムで介入することは脳の微小血管血流量の増加とセロトニン作動性ニューロンの賦活化によるメンタルヘルスの維持に有利かもしれないという報告があります。そのため、チューインガムはうつに影響があると考えられます。

特にストレス負荷状況において注意力と集中力を刺激するという報告があります。この効果は、チューインガムによる脳の酸素化とグルコースの運搬による脳活動量の向上と関連し、記憶力が改善すると信じられています。

チューインガムによるストレス、不安、うつの低下に加えて認知面への効果が報告されています。チューインガムは迷走神経を刺激することによりリラクゼーション効果があります。

学生には沢山の責任があります。試験とキャリアへの期待はかなりのストレスとなります。加えて、大学生は一般的に混雑した学生棟で生活しており、集中力が問題となります。この状況はストレスと不安の増加を引き起こします。チューインガムにより脳前頭領域への血流量の増加と脳活動量の増加が起こります。酸素化した血液とグルコースが認知を向上します。Choiらはチューインガム時の海馬と海馬傍の活動は記憶機能に関連するかもしれないと報告している。チューインガムは集中力を高めストレスや不安を軽減すると信じられています。チューインガムは短期記憶の改善にも寄与します。

本実験の目的はチューインガムの不安、ストレス、うつ、自己注目、試験の成功への効果を決定する事です。

実験方法

被験者

顎口腔機能に異常を認めず毎日30分以上ガムを噛むことができる看護学生3年生250名を対象としています。

250名から100名を抽出し3群にわけます。34名を長期ガム咀嚼群、33名を短期ガム咀嚼群、33名をコントロール群に設定します。

学生は性別と成績によりまず分類されます。全ての階層が同じ数になるように調整します。その後学生はランダムに3群のどれかに割り振られます。

手法

以下の質問表2種類を使用しています。これによりストレスや不安などの定量化をしています。
the Depression Anxiety Stress Scale
the Self-focused Attention Scale

10月と11月にデータを採取しています。この秋のセメスター自体は15週間で構成されており、8周目に中間試験があります。試験14日前に質問表に回答しました。

シュガーレスマスティックガム(ギリシャ・キオス島原産のウルシ科の低木マスティック(Pistacia lentiscus)の樹液を原料とした天然の食用のガム)を介入として使用しました。シュガーレスガムを選択した理由は脳グルーコースレベルに影響を与えないようにするためです。

長期咀嚼群は試験14日前にシュガーレスガムを与えられました。最低でも30分はガムを噛むように指導されました。ガムを噛む期間は試験終了までの2週間です。最初の質問に答えてから5日目から19日目の2週間ということになります。
短期咀嚼群は試験2日前から試験終了時までガムを1日最低30分噛むように指導されました。
コントロール群はガムを噛むことを禁止されました。

ガムを噛む時間は以前の研究を参照しました。ショートメッセージを監督のために毎日送りました。

試験開始前に2回目の質問表回答、試験が終わってから3度目の質問表に回答してもらいました。それぞれの群の平均値を群間で比較しました。

結果

3群の構成に関して表1に示します。社会人口学的な要因に関して3群間で有意差は認めませんでした。

3群間におけるガム咀嚼効果に関する検討ですが、うつ、不安、ストレス、自己注意において、3群間には全て有意差を認めませんでした。しかし時期による各群における比較では全ての群に有意差を認めました。群と時間の相互作用においては不安と自己注意が有意差を認めました。

長期間咀嚼群:うつ、不安、ストレス、自己注目の全項目において1回目の質問表記載時が2,3回目の質問表記載時よりも有意に高い値を示しました。

短期間咀嚼群:うつと不安は1回目と2回目で有意差なしです。1,2回目と3回目とは有意差有りでした。ストレスの1回目は2,3回目より有意に高い結果となりました。自己注意に関しては全ての時期において有意差を認めませんでした。

コントロール群:うつ、不安、ストレスに関しては全ての時期で有意差を認めませんでした。自己注意に関しては1,2回目が3回目よりも有意に高い結果となりました。

テストの成績:長期咀嚼群(76.5±4.1)は、短期咀嚼群(72.3±8.1)、コントロール群(72.7±9.3)と比較して有意に高い成績となりました。

考察

考察から試験開始15日前のガム咀嚼という謎の群がでてくるのですが、文脈から長期ガム咀嚼群の事を指していますので、おそらく試験開始9日前の間違いではないかと思います。

各群間で4項目に有意差がなかった事から、短期ガム咀嚼でも有効だろう、ということは最低でもテスト2日前からガム咀嚼を始めれば充分にストレスや不安、うつのレベルを下げる事ができるのではないかという考察をしています。

However, no difference was found between the stress, anxiety, and depression levels of the experiment groups who started to chew gum 15 and 2 days before the exam week. This finding suggests that starting to chew gum at least 2 days before an exam is enough to reduce stress, anxiety, and depression levels, as also reported in Smith and Woods’ (2012) study results.

ただし、本研究で成績が向上したのは試験開始9日前から14日間ガムを噛んだ学生なので、短期記憶の向上による成績の向上を図るなら試験開始のある程度前からガム咀嚼を起こって継続する必要があるとも考察しています。他の研究においてもガム咀嚼で成績が上昇したという報告があります。

The increase in academic success of the students who chewed gum in our study is believed to result from the more active use of short-term memory when chewing gum. However, in order to enhance exam success, one needs to start chewing gum at least 14 days before the exam. Johnston, Tyler, Stansberry, Morene, and Foreyt (2012) found that students in the chewing gum group improved their standardized test scores and maintained higher grades in mathematics (14 weeks) than those in the no-chewing gum group.

終わりに

ガムを噛むというのがここまで研究されているのは驚きでした。
歯学部生の学生さん達、ぜひ毎日30分ガムを噛む時間を作って勉強すると記憶力がアップして憶えられることが増えるかもしれません。
成績アップも期待できるようですから、これはやってみて損はないと思います。
前回のブログのやり方でガムを噛めばさらに舌も頬も鍛えられますよ。

ただ、毎日30分ガム噛むって結構顎が疲れますよね。朝昼晩で10分ずつとしてもなかなかルーチンワークにするのは大変です。
まあ顎関節やらない程度にしましょうね。

また、長期記憶に関しては検討されていませんので、それが定着するかはまた別次元かもしれませんが、海馬の活性化が起こるというならある程度期待できるのではないかと思います。

Tyler, Stansberry, Morene, and Foreyt (2012)が入手できれば読んでみたい所ではあります(追記:入手不可でした)。

とりあえず試験前はガムを噛もう!!


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