将来的な自立の喪失イベントは、義歯などで機能歯数を復活させることで予防できる可能性がある
最近は義歯のケアについての論文を多く読んできましたが、老年歯科医学会の講演をきいていていくつか気になる論文が提示されていたので、その1つをまず読んでみることにしました。日本の論文で、ベースライン時の機能歯数などが、将来的な自立の喪失イベント(要介護への移行または死亡)に与える影響を検討した論文となります。
Impact of number of functional teeth on independence of Japanese older adults
Kenji Maekawa , Tomoko Ikeuchi , Shoji Shinkai , Hirohiko Hirano , Masahiro Ryu , Katsushi Tamaki , Hirofumi Yatani , Takuo Kuboki ; Kusatsu ISLE Study Working Group Collaborators; Aya Kimura-Ono , Takeshi Kikutani , Takashi Suganuma , Yasunori Ayukawa , Tomoya Gonda, Toru Ogawa , Masanori Fujisawa , Shoichi Ishigaki , Yutaka Watanabe , Akihiko Kitamura, Yu Taniguchi , Yoshinori Fujiwara, Ayako Edahiro Yuki Ohara, Junichi Furuya , Junko Nakajima Kento Umeki , Kentaro Igarashi , Yasuhiro Horibe Yoshihiro Kugimiya , Yasuhiko Kawai , Hideo Matsumura , Tetsuo Ichikawa , Shuji Ohkawa , Kazuyoshi Baba
Geriatr Gerontol Int. 2022 Dec;22(12):1032-1039. doi: 10.1111/ggi.14508. Epub 2022 Nov 21.
PMID: 36408675
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36408675/
Abstract
Aim: To examine the relationship between the number of present and functional teeth at baseline and future incidence of loss of independence.
Methods: Participants were community-dwelling older individuals who participated in a comprehensive geriatric health examination conducted in Kusatsu town, Japan, between 2009 and 2015. The primary endpoint was the incidence of loss of independence among participants, defined as the first certification of long-term care insurance in Japan. The numbers of present and functional teeth at baseline were determined via an oral examination. Demographics, clinical variables (e.g., history of chronic diseases and psychosocial factors), blood nutritional markers, physical functions, and perceived masticatory function were assessed.
Results: This study included 1121 individuals, and 205 individuals suffered from loss of independence during the follow-up period. Kaplan-Meier estimates of loss of independence for participants with smaller numbers of present and functional teeth were significantly greater than for those with larger numbers of teeth. Cox proportional hazard analyses indicated that a smaller number of present teeth was not a significant risk factor after adjusting for demographic characteristics. However, the number of functional teeth was a significant risk factor after the adjustment (hazard ratio: 1.975 [1.168-3.340]). Additionally, higher hazard ratios were observed in other adjusted models, but they were not statistically significant.
Conclusions: The number of functional teeth may be more closely related to the future incidence of loss of independence than the number of present teeth. This novel finding suggests that prosthodontic rehabilitation for tooth loss possibly prevents the future incidence of this life-event.
目的:ベースライン時の現在歯数、機能歯数と、将来の自立の喪失イベントの関連性を調査する事です。
方法:被験者は2009~2015年に草津町で行われた包括的な高齢者健康調査に参加した地域在住高齢者です。主要エンドポイントは、介護保険への初めての認定として定義された自立の喪失イベントです。ベースライン時の残存歯数、機能歯数を診査しました。実態的人口統計、臨床的な変数(既往歴、心理的要素)、血液栄養マーカー、身体機能、咀嚼機能が調査されました。
結論:本研究には1121名が参加し、205名がフォローアップ期間中に自立を喪失しました。Kaplan-Meier法では、残存歯数、機能歯が少数の被験者は、多数残存している被験者よりも有意に自立喪失すると推定されました。Cox比例ハザード分析では、実体的人口統計を調整後に、残存歯数が少ない事は有意なリスクファクターではない事が示唆されました。しかし、機能歯数は調整後でも有意なリスクファクター(ハザード比1.975) でした。加えて、他の調整モデルで高いハザード比が観察された変数は全て統計的に有意ではありませんでした。
結論:機能歯数は、現在歯数と比較して将来の自立の喪失イベントにより密接に関与している可能性があります。この知見は、欠損補綴が将来的な自立喪失イベントを予防する可能性があることを示唆しています。
ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して意訳要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。
緒言
自立の喪失(LOI)は、健康寿命の終わりと死亡へと通ずる重要な人生イベントであり、予防されるべきです。このシチュエーションでは、口腔機能は、健康を維持するために必要な栄養素を摂取するために重要な役割をしており、そのために、高齢者の身体、認知機能と関連しています。フレイルと現在歯数(NPT)、咬合力、混合能力、咀嚼能力、オーラルディアドコキネシス、咬筋厚の間には有意な相関が認められます。さらに、最近の前向きコホート研究では、現在歯数の少ない高齢者における自立の喪失機会と、咬合支持の減少との間に有意な相関が報告されています。前回の研究では、現在歯数の減少は栄養的、身体的低下を引き起こし、自立の喪失に至る事が推定されました。
しかし、歯を喪失した多くの人が補綴治療を受けることで、機能歯数(NFT)が増加します。そのため、自立の喪失は補綴治療と栄養状態の維持により予防される可能性があります。実際、我々の最近の研究では、地域在住高齢者において、機能歯数は現在歯数よりも全ての原因の死亡を強く予知しました。これは、補綴治療による機能歯数の増加により、咀嚼機能と栄養状態の改善が起こり、現在歯数が少ない事が死亡リスクに与えるネガティブな影響を軽減またはキャンセルする可能性が示唆されました。さらに、機能歯数の増加は自立の喪失防止にポジティブな効果があるかもしれませんが、検証した論文はありません。
本研究では、地域在住高齢者において機能歯数と自立の喪失の関連性を検討しました。特に、ベースライン時の残存歯数、機能歯数と将来的な自立の喪失との関連性を様々な因子を調整後に検討しました。
方法
被験者
被験者の殆どは2009年から2015年の草津町で行われた地域在住高齢者(65歳以上)の包括的高齢者健康調査に参加した人達です。殆どの被験者は、同じ保健所で毎年夏に行われる調査を複数回受けました。そのため、最初の調査で得られたデータがベースラインデータとなります。1240名(男性539名、女性701名、平均年齢76.6±7.1歳)を登録しました。登録者には、インフォームドコンセントの前に目的、調査での潜在的なリスクなどを説明しました。
エンドポイントとフォローアップ
本研究のエンドポイントは自立の喪失で、介護保険の新規認定または認定前の死亡と定義されます。介護保険(LTCI)は日本全国共通の制度であり、各自治体では地域認定委員会が、日常生活動作に支障がある申請者の中からLTCIを受けるべき人を決定します。死亡率の確認は、日本の人口動態統計とリンクしている地域の登録簿をチェックすることで行いました。
フォローアップ期間は2016年2月までとしました。転居などでフォローアップに参加できなくなった被験者は除外しました。ベースライン時にすでに介護保険認定を受けている人も除外しました。
調査項目
以下の変数を記録しました。年齢、性別、慢性疾患の既往、GDS(老年期うつ病評価尺度)、MMSE、BMI、血液栄養マーカー、身体機能(歩行速度と握力)、咀嚼能力。有無を聞いた慢性疾患は、高血圧、高脂血症、脳血管疾患、心疾患、糖尿病、がん、です。全ての被験者は各疾患について診断されているかどうかを質問されました。GDSについてはカットオフを6とし、6未満と6以上の2群に分類しました。MMSEはカットオフを24とし、24未満と24以上の2群に分類しました。身長と体重を計測し、血液を採取しました。被験者はBMIにより、20.0未満、20.0~24.9、25.0以上の3群に分類しました。血液栄養マーカーに関しては、各項目を2群に分類しました。ヘモグロビン、男性13.0未満、13.0以上、女性12.0未満、12.0以上、アルブミン 男女共通4.0未満、4.0以上、コレステロール、男性160未満、160以上、女性180未満、180以上。高齢者におけるコレステロール低値は死亡リスクの上昇と関連します。そのため、われわれは、国民健康・栄養の現状のデータから男性で160、女性で180をカットオフ値としました。
被験者の身体機能を評価するために、歩行速度と握力を計測しました。歩行速度はNofujiらの方法に従って計測し、被験者を歩行速度毎秒1.0m未満と1.0m以上の2群に分類しました。握力はSmedley-type hand dynamometerで計測し、2回試行して良い結果を採用しました。握力は男性で26.0kgf未満、25.0kgf以上、女性は18.0kgf未満、18.0kgf以上で2群に分類しました。主観的咀嚼機能は「咬みづらいと感じていますか?」という質問に対して(i)問題なし、(ii)少し問題ありだが殆ど食べられる、(iii)問題ありで限られた食品しか食べられない、(iv)殆ど食べられない、の4つのどれかに被験者自身が回答します。本研究では(iv)を選択したのが3名しかいなかったため、(iii)と(iv)を1つのグループに統合しました。
口腔内診査
口腔内診査は経験のある歯科医師によって行われました。現在歯数と機能歯数をカウントしました。カウント方法の詳細はMaekawaらにより記載された方法に基づきました。現在歯数0~9本、10~19本、20本以上で3群に分類しました。いくつかの論文で20本以上歯があれば満足いく咀嚼能力があるという事が示唆されています。また、機能歯数20本以上と19本以下で2群にわけました。
統計解析
NFTにより分類された2群間のベースラインの比較としてχ2検定とt検定を使用しました。Kaplan-Meier分析は自立の喪失を推定するのに使用しました。群間の自立の喪失カーブを比較するために、log-rankテストを用いました。最後にCox比例ハザード分析が、自立の喪失についてのハザード比を算出するために用いられました。6つの解析モデルを本研究では使用しました。このモデリング戦略は、日常生活動作低下の潜在的危険因子としての予測因子を段階的に増加させることに基づいて行いました。これらは、人口統計学的特徴を調整した上で実施しました。ベースライン時の咀嚼能力が将来の機能低下の発生率と関連することが以前の研究で示唆されたため、この因子はLOIの発生率と相関すると仮定しました。したがって、この因子は最後の統計モデルであるモデル6に送られました。モデル0(粗調整モデル):NPTとNFTのみが予測因子として同時に提示されました。モデル1:モデル0、人口統計学的特徴(年齢と性別)で調整。モデル2:モデル1、臨床関連変数(高血圧、高脂血症、脳卒中、心臓病、糖尿病、がん、うつ病、認知機能)で調整。 モデル3:モデル2、BMIと栄養マーカー(アルブミン、ヘモグロビン、コレステロール)で調整。モデル4:モデル3、身体機能(通常の歩行速度と手の握力)で調整、モデル5:モデル4、咀嚼能力で調整。有意水準は5%としました。
結果
研究の流れ
研究期間中、トータルで4364名の被験者が毎年の診査に参加しました。我々は最初の健康調査時に口腔内診査を含む全ての調査を完了した1240名を登録しました。フォローアップを完了できなかった被験者、転居(52名)、ベースライン時に介護保険認定を受けていた(67名)を研究から除外しました。そのため、トータルで1121名の被験者が本解析に参加しました(図1)。
サンプル特性
表1にベースライン時の機能歯数19本以下、20本以上群のデータを示します。有意差が認められたのは、現在数の分布、性別、高血圧と高脂血症の既往、血液栄養パラメーター(ヘモグロビン)、咀嚼能力でした。これらのデータから、機能歯数は独立して自立の喪失の潜在的リスク因子に影響を与える事が示唆されました。
将来の自立の喪失で分類した被験者群のベースラインデータを表S1に示します。
Kaplan-Meierによる推定
フォローアップ期間の間に158名の被験者が介護保険認定を受け、47名が介護認定を受ける前に死亡しました。そのため、本研究のエンドポイントに到達したのは205名でした。図2にKaplan-Meierによる推定結果を示します。現在歯数、機能歯数が少ない被験者は、現在歯数、機能歯数が多い被験者よりも有意に自立の喪失を迎える可能性が高くなりました(log-rank 現在歯数 p<0.001、機能歯数 p=0.022)。
自立の喪失のリスクファクター
Kaplan-Meierの結果に基づき、現在歯数と機能歯数が自立の喪失の独立したリスクファクターかどうかの検討をCox比例ハザードモデルを用い行いました(表2)。モデル0では、現在歯数、機能歯数が少ない事は自立の喪失の有意なリスクファクターでした。しかし現在歯数については、後の解析では有意ではなくなりました。モデル1では、機能歯数と高齢が有意なリスクファクターでした。モデル2では、機能歯数は有意なリスクファクターではなくなり、高齢、男性、うつスコアが高く、MMSEスコアが低い事が有意なリスクファクターでした。
モデル3では、モデル2と同様に、高齢、男性、うつスコアが高く、MMSEスコアが低い事が有意なリスクファクターとなりました。加えて、血清アルブミン値が低い事も有意なリスクファクターでした。
モデル4では、高齢、男性、血清アルブミン値低値と歩行速度が遅いが有意なリスクファクターでした。
モデル5では、咀嚼能力に問題がある、が有意なリスクファクターに加わりました。その他は、高齢、男性、MMSE低値、血清アルブミン値低値、歩行速度が遅いでした。
考察
現在歯数は自立の喪失の有意なリスクファクターである事が以前報告されています。本研究では、自立の喪失イベントと、現在歯数、機能歯数間に関連性が認められました。現在歯数に関係なく、義歯を所有している人は食事中に使用しているので、残存歯数よりも機能歯数が正確に咀嚼機能を反映すると予測しました。そのため、機能歯数と現在歯数を同時に予知因子として組み込み、他の変数を調整しました。
Kaplan-Meierの結果から、機能歯数と残存歯数が少ないと自立の喪失の可能性が増大することが示されました。ベースライン時の少ない現在歯数が自立の喪失の可能性を増大させることは、以前の研究での知見と一致します。本研究の最も価値ある知見は、ベースライン時の少ない機能歯数が自立の喪失の可能性を増大させるということです。以前のシステマティックレビューでは、現在歯数が死亡を予知すると報告されていますが、機能歯数は現在歯数よりも全死因の強い予知因子として知られています。そのため、平均寿命、自立の喪失、現在歯数、機能歯数の関係性は一貫しています。
次のCox比例ハザードモデルでは、高齢、男性、うつ、低認知、低身体機能、低栄養が自立の喪失の有意なリスクファクターであることが実証されました。これらの結果は以前の研究結果と一致しています。このことは、この母集団から得られた知見が高い外部妥当性を示すことを示唆しています。この結果から、少ない機能歯数は、少ない現在歯数よりも自立の喪失の将来的な発生に強く影響することも示唆されました。そのため、機能歯数は口腔内の状態と機能の、より正確な指針になるかもしれません。機能歯数の維持は、将来の自立の喪失を予防するかもしれません。うつ状態と認知機能をモデル1に加えることで、モデル1の機能歯数に統計的有意差が認められましたが、モデル2では認められませんでした。この知見は、うつと認知機能がベースライン時の機能歯数と関連している可能性を間接的に示唆しています。実際、最近の研究では、機能歯数と咬合ユニットの喪失が認知機能低下に関連していると報告しています。この興味深い仮説を実証するためには、さらなる研究が必要です。
さらに、モデル3では、血清アルブミン低値が自立の喪失の有意なリスクファクターでした。多変量解析の結果から、血清アルブミン低値(4.0未満)は機能歯数よりも強い自立の喪失のリスクファクターでした。少ない機能歯数による不十分な栄養摂取が、自立の喪失を招く事が想定されるかもしれません。しかし、ベースライン時の機能歯数が多い、少ない群間における血清アルブミン値は有意差はありませんでした。これは、血清アルブミン値は機能歯数と関連性がないことを示唆しています。血清アルブミン値は肝臓や腎臓の機能不全により減少します。不幸にも、これらの器官の機能を本研究では評価していませんでした。この疑問に応えるためには、パラメーターを増やしたさらなる研究が必要です。
モデル5では、主観的な咀嚼能力が自立の喪失の有意なリスクファクターとなりました。いくつかの研究では、主観的な咀嚼能力が低い事は、機能障害、フレイルへの移行と有意に相関する事が報告されています。さらに、最近の縦断研究では、自立地域在住高齢者において、咀嚼能力を含む主観的な口腔機能が悪い事は、自立の喪失のリスク上昇と相関することが報告されています(論文27)。本研究で明らかになった、主観的な咀嚼能力と自立の喪失の有意な関連性は以前の報告と一致しています。そのため、以前のシステマティックレビューでは、高齢者における歯の数、機能歯ユニット数と主観的な咀嚼能力には正の相関があると報告されています。また、主観的咀嚼能力を予知因子としてモデル5に追加したことにより、機能歯数(0~19)のハザード比はモデル4の1.539から1.234に低下しました。一方で現在歯数は殆ど変化しませんでした。これらの統計的知見から、機能歯数と主観的咀嚼能力が相関しているかもしれない事が間接的に示唆されました。加えて、機能歯数が少ない事は主観的な咀嚼能力にネガティブな影響を与え、自立の喪失のリスクファクターとなりえると考える事には妥当性があります。さらに、歩行速度が遅い事がモデル5で独立した有意なリスクファクターであったことは、歩行速度と主観的な咀嚼能力が、自立の喪失の独立したリスクファクターであるという考え方を裏付けています。
Limitaition
1)統計解析のモデルに歯周組織の状態に関するデータが含まれていません。
2)義歯の質について検討していません。
3)主観的な咀嚼能力は現在歯数、機能歯数、義歯の質にも影響する全体的な咀嚼機能の指標となりえます。
4)残存歯数と機能歯数を全てのCox比例ハザードモデルに同時に提示しました。
これにより調整が過度になったかもしれません。
結論
リスクファクターとして、現在歯数よりも機能歯数が自立の喪失と密接に関連している事が本研究からわかりました。さらに、日本の地域在住高齢者において、自立の喪失と主観的咀嚼能力は、自立の喪失と現在歯数、機能歯数よりも強い関連性が認められました。これらの結果から、機能歯数を充分多くキープし、良好な咀嚼機能を維持する事は、将来の自立の喪失イベントを予防し、健康な栄養状態を保つために重要です。
まとめ
現在歯数が少なくなると死亡リスクや認知症リスクが上昇する、などのエビデンスがありますが、それだと歯がなくなった人は救いがありません。そのため、補綴により増加する機能歯数ではどうなのかを検討したのがこの論文です。
機能歯数を検討した論文は色々あるのですが、機能歯数のカウント数が論文で異なります。本研究では機能歯数0~19本の人がかなり少ない事から、義歯の人工歯なども全て機能歯としてカウントされていると考えられます。しかし、Fukaiらの「機能歯数10本未満の女性高齢者は義歯使用未使用で以後15年間での死亡率に有意差あり」「機能歯数は超高齢者の死亡率に関与する」という論文では、機能歯数はあくまで残存歯同士のみで評価しているようです。Iwasakiらの「咬む歯が少ない事は将来的な食品摂取に悪影響をあたえる」という論文では機能歯ユニット数(最大14)というカウントを行っています。機能歯数(number of functional teeth)と文字で書くと同じなのに全然カウント方法が違う可能性があるわりに、そのカウント方法を論文に明記していない論文が多く、機能歯数という用語は使用に注意を要します。
今回の論文では、補綴治療による機能歯数の復活も含めて介護の喪失リスクを軽減させる可能性が示唆されたという結果ですが、kikutaniらは「天然歯多数喪失に義歯を装着すると、装着しないよりは栄養状態は改善するが、天然有歯顎群と比較すると低栄養リスクは高い」と報告しています。今回の結果と踏まえると、義歯装着の意味合いというのが強化されたのかもしれません。