普通の歯科医師なのか違うのか

MRONJの非外科的アプローチは治癒率がかなり低い

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

MRONJの治療法に関するシステマティックレビュー

色々検索したのですが、EBMがそこまで蓄積されている範囲ではない事もあり、2014年のシステマティックレビューを読んでみることにしました。

この時にすでにガイドラインがなくてポジションペーパーに頼らざるを得ない状況に関して書かれているのですが、2020年でもそれほど変化していないのが悲しい所です。

A systematic review of therapeutical approaches in bisphosphonates-related osteonecrosis of the jaw (BRONJ)
Oral Oncology 50 (2014) 1049–1057
Katia Rupel , Giulia Ottaviani, Margherita Gobbo, Luca Contardo, Giancarlo Tirelli ,Paolo Vescovi, Roberto Di Lenarda, Matteo Biasotto

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25240948/

Abstract

Objectives: The clinical management of bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw (BRONJ) remains controversial. Since universally accepted guidelines have not been released yet, clinicians usually chose the type of treatment according to position papers based on expert opinion, or on empirical experience. The aim of this systematic review is to identify different therapeutical approaches for BRONJ that have been described in literature and to describe their effectiveness.

Materials and methods: A Medline via Pubmed and Scopus database literature search was conducted and all publications fulfilling the inclusion and exclusion criteria were included in eligibility assessment. The full texts of 146 retrieved articles were then screened and 40 studies were included in the quality assessment process.

Results: After quality assessment, 22 full text articles were selected for the final review. 14 articles out of 22 were screened for stage-related outcomes. The overall outcome results and results for every disease stage were the highest when patients were treated with extensive surgery or extensive laser assisted surgery.

目的:BRONJの臨床的管理に関しては未だに議論の対象です。ガイドラインが未だにないため、臨床家は専門家の意見や経験に基づいたポジションペーパーに従って治療手段を選択しています。本研究の目的は、文献中に有効性が記載されているBRONJに対する臨床的なアプローチを識別することです。

実験方法:文献検索を行い、選択、除外基準に当てはめた結果、146のフルテキストの文献から40の研究が本研究の対象となりました。

結果:最終的に文献の質を検討した結果22の研究が残りました。22の研究のうち14はBRONJのステージに関連した結果でした。全体的な結果においても、各ステージにおける結果でも広範囲な外科処置、または広範囲なレーザーアシストシャージャリーが最も良い結果となりました。

ここからはいつもの通り本文を適当に要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

緒言

2000年初頭からBRONJが報告される様になりました。BRONJの正確な病因-病原性メカニズムについては未だ構築されている段階の一方、感染、外傷、血管減少などが重要な役割を果たす事が明らかになっています。
デスノマブの使用も骨壊死に関連しており、破骨細胞の抑制と骨ターンオーバーの抑制が病因-病原性の中心的な役割であるという仮説を強く裏付けています。残念ながら正確なメカニズムはまだ分からないままです。

2009年にthe American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons(AAOMS)はポジションペーパーをアップデートしBRONJの治療推奨に関したステージ区分と診断を提唱しました。

ポジションペーパーによると、BRONJ患者には以下の3つの特徴があると考えられるようです。
(1)BPによる治療歴
(2)顎顔面領域に露出、壊死した骨が8週間以上存在
(3)顎骨に放射線照射の既往なし

これらの基準は、新しいデータが利用できるようになると改訂され続けていますが、広く受け入れられています。

BRONJの治療は骨髄炎や骨放射線壊死と類似した、外科的なデブライドメントや区域切除、高気圧酸素治療を含む治療プロトコールとしてスタートしました。それは予知性に乏しく、同じ様な結果にならない状態となりました。抗菌薬投与や局所的なデブライドメント、区域切除、それらの複合など多くの治療法が報告されてきました。臨床医達は自信の経験と同様にポジションペーパーに基づいて治療法を選択しています。2009年のAAOMSのポジションペーパーでは、外科的な治療法は治癒率がかなり低いので、治療のゴールは緩解に焦点をあてて保存的であるべきとしています。しかし、最近のいくつかの研究ではBRONJ領域を区域切除した後に安定したBRONJ徴候のない状態を報告しており、治療のゴールは緩解だけではないかもしれません。

今日に至るまで、統一見解としての治療プロトコルは存在していません。また、システマティックレビューまたはメタアナリシスもありません。本研究の目的は文献で報告されているBRONJの治療法を確認し、治療法、BRONJステージによる治癒率について調査する事です。

実験方法

CQ:どの治療法がBRONJに有効か(全体、ステージ別)

調査した文献:2005年~2013年に掲載された文献

対象とする基準
5名以上の患者
2009AAOMSによるステージ分類
治療プロトコールがしっかり記載
治癒が粘膜の完全で安定した治癒と記載されている
全体の結果、ステージ別の結果が記載
最短でも3か月のフォローアップ

得られた論文の質を評価してさらに絞り込みを行っています。

結果

1000以上の論文からまず上記基準で絞り込みし40の研究が対象となり、そこから論文の質の検討を行った結果最終的に22の研究が質を満たすと判断されました。そのうち14の研究がBRONJのステージ別の治療結果を報告しています。これらの研究はコホート研究が殆どでRCTは1つしかないためメタアナリシスは不可能でした。

治療結果

22の研究では14の異なる治療法が858名のBRONJ患者に施行されています。大きく分けて非外科的か外科的かで分類することが出来ます。

非外科的アプローチ

200名の患者が非外科的なアプローチで治療されています。
口腔衛生管理、通常の歯科的なフォローアップ、クロルヘキシジンによるマウスリンス、抗菌薬投与が痛みや炎症に対して行われました。

抗菌薬ですが、アモキシシリン500mgまたは1gにクラブラン酸、アジスロマイシン500mg、クリンダマイシン300mgを追加する、しないパターンが最も多く、その他にはメトロニダゾール250mg投与という研究もありました。

こういった非外科処置単体では成功率が低い結果となりました。このアプローチでは壊死組織の安定化、または若干の改善しか認められなかったという報告、低い治癒率だったという報告が多数となりました。2つの研究では50%を超える患者が治癒したと報告しています。1つの研究ではNd:YAGを用いたLLLT((Low level laser therapy)が行われていますが、治癒率が30%でした。

FreibergerはRCTにおいてHBO (Hyperbaric Oxygen)の効果を報告しています。HBO施行の治癒率は52%で、従来の非外科処置単独の33%より高くなりましたが、統計的な有意差は認められませんでした。

外科的アプローチ

658人の患者に対して外科的処置が行われています。行われた外科処置は大きく分けて従来の外科処置、広範囲な外科処置、レーザーを用いた外科処理の3つに分類できます。

従来の外科処置
腐骨除去に壊死骨表面のデブライドメントを追加、または追加しない治療法が従来の外科処置となります。2つの研究を除いた治癒率は50%を超えるぐらいと考えられます。2つの研究では外科処置前にBPが休薬されています。LLLT併用の従来の外科処置に関する1つの研究では治癒率は74%と報告されています。PRP(Protein Rich Plasma)を追加した場合も高い成功率が報告されています。トータルでの治癒率は75%でした。

広範囲な外科処置
全身麻酔による区域切除が広範囲な外科処置に該当します。1つの研究では治癒率が0%ででしたが、他の研究では高い成功率でした。HBOを外科前に追加した場合の結果は対照的で1つの研究では治癒率が低く、もう1つの研究ではかなり高い治癒率となっています。蛍光ガイドによる区域切除やPRPの使用に関しても治癒率が上昇すると報告されています。
トータルでの治癒率は84%でした。

レーザーを用いた外科
レーザーは熱による副作用なしに骨切断を効果的に可能にします。また、レーザーには殺菌作用、解毒作用、生物的刺激作用があり、骨の再生などを潜在的に高める可能性があります。Er:CrYSGGとEr:YAGレーザーが用いられており、治癒率は60~100%の間でした。
トータルでの治癒率は85%でした。

ステージによる治療結果

14の研究のうち13は治療方法がコンビネーションで非外科、従来の外科、広範囲な外科、レーザーを用いた外科の4つに分類されます。

非外科
抗菌薬療法、抗菌薬療法+LLLT
トータルの治癒率はステージ1が33%、ステージ2は24%、ステージ3が0%でした。

従来の外科処置
抗菌薬療法+従来の外科、抗菌薬長期投与療法+従来の外科、抗菌薬療法+BP休薬+従来の外科、抗菌薬療法+LLLT+従来の外科、抗菌薬療法+LLLT+PRP+従来の外科というバリエーションがありました。
トータルの治癒率はステージ1が72%、ステージ2が79%、ステージ3が27%でした。

広範囲な外科
抗菌薬療法+広範囲な外科、抗菌薬療法+BPO+広範囲な外科、抗菌薬療法+BPO+BP休薬+広範囲な外科、抗菌薬療法+蛍光ガイド広範囲な外科、抗菌薬療法+PRP+広範囲な外科というバリエーションがありました。
トータルの治癒率はステージ0が89%、ステージ1が87%、ステージ2が96%、ステージ3が81%でした。

レーザーを用いた外科
抗菌薬療法+Er:CrYSGGまたはEr:YAGレーザーを用いた外科、抗菌薬療法+BP休薬+LLLT、Er:CrYSGGまたはEr:YAGレーザーを用いた外科のバリエーションがありました。
トータルの治癒率はステージ1が100%、ステージ2が83%、ステージ3が100%でした。

まとめ

従来型の外科処置ですが、報告によりかなりばらつきがあり、これをどう解釈するかが難しい所です。症例数が多い所の成功率が結構高い感じなのですが、これは練度の問題なのか、何なのかという所です。

それに比較すると区域切除やレーザー使用の外科に関してはある程度どの報告も治癒率が高い結果となっています。

非外科ですが、治癒率は極めて低い、と言わざるを得ません。

ステージ1で33%、ステージ2で24%ですから、全身的に外科が適応にならない場合の消極的な選択肢と言わざるを得ません。

つまり、MRONJになってしまった場合、開業医で出来る事は専門機関への紹介、これ以外はありません。変に様子見とかで引っ張るのはお勧めできないと言えるでしょう。怪しいなら精査、加療依頼で送る、これしかないと思います。

なかなかMRONJに関してエビデンスがまだしっかりないというのが難しい所ですが、開業医として出来る事ははっきりしていると思います。

2020年口腔外科学会雑誌の総説に関するブログは以下になります。

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