OF-5には身体的フレイル、要介護、死亡の予測妥当性がある
今回は前回の論文より少し前にパブリッシュされたOF-5の有効性に関する検証についての論文です。この論文でOF-5項目2つ以上該当が、有意に身体的フレイルと関連する事がわかり、それがOF-5の判定基準になっています。今後の流れを決めた論文と言えるでしょう。
前回の論文の方が今回より新しいもので、OF-5の流れから言うとまずはこちらを読んでからの方がよかったな、と読んでから思いました。
Oral frailty five-item checklist to predict adverse health outcomes in community-dwelling older adults: A Kashiwa cohort study
Tomoki Tanaka , Hirohiko Hirano , Kazunori Ikebe , Takayuki Ueda , Masanori Iwasaki , Maki Shirobe , Shunsuke Minakuchi , Masahiro Akishita , Hidenori Arai , Katsuya Iijima
Geriatr Gerontol Int. 2023 Sep;23(9):651-659. doi: 10.1111/ggi.14634. Epub 2023 Jul 17.
PMID: 37661091
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37661091/
Abstract
Aim: To enable easy assessment of oral frailty; that is, an overlapping slight decline in multifaceted oral function, in any setting, we developed the oral frailty five-item checklist (OF-5), and examined its predictive validity for increased risks of physical frailty, physical disability and mortality among community-dwelling older adults.
Methods: This population-based cohort study randomly selected 2044 residents in Kashiwa, Japan, with no long-term care needs. Baseline data were collected in 2012, and follow-up data were collected in 2013, 2014, 2016, 2018 and 2021. The OF-5 includes five measures: fewer teeth, difficulty in chewing, difficulty in swallowing, dry mouth and low articulatory oral motor skills. Physical frailty was defined according to the Cardiovascular Health Study criteria. Physical disability and mortality determined from the long-term care insurance receipt database were followed for 9 years.
Results: Of 2031 eligible participants (mean age 73.1 ± 5.6 years; 51.1% women), 39.3% individuals with ≥2 OF-5 points had significantly increased prevalence and new-onset rate of physical frailty. After adjusting for potential confounders, oral frailty, defined as ≥2 OF-5 points, was associated with increased risks of physical disability (adjusted hazard ratio 1.40; 95% confidence interval 1.14-1.72) and mortality (adjusted hazard ratio 1.44; 95% confidence interval 1.11-1.87). The highest adjusted hazard ratios were observed in older adults with coexisting physical and oral frailty.
Conclusions: The OF-5 showed strong predictive validity for physical frailty, physical disability and mortality in Japanese older adults. This assessment tool can be implemented in various settings and foster comprehensive prevention through interprofessional collaboration.
目的:どのような環境においても、多面的な口腔機能の重複したわずかな低下、すなわち、オーラルフレイルの簡易的な評価を可能にするために、OF-5を開発し、地域在住高齢者の身体的障害、死亡、身体的フレイルのリスク増加に対する予測妥当性を検討しました。
方法:コホート研究には、柏市在住の介護の必要の無いランダム2044名が選択されました。ベースラインのデータは2012年に採取し、フォローアップデータを2013、2014、2016、2018、2021年に採取しました。OF-5は歯の減少、咀嚼困難、嚥下困難、口腔乾燥、滑舌低下の5つの測定項目から構成されます。身体的フレイルはCHS基準で定義されました。身体障害と死亡については、介護保険請求データベースを9年間フォローしました。
結果:2031名(平均年齢73.1±5.6歳、女性比率51.1%)のデータが使用可能であり、OF-5が2点以上の39.3%は身体的フレイルの有病率、または新規罹患率が有意に上昇しました。交絡を調整後、OF-5が2点以上と定義されたオーラルフレイルは身体障害(ハザード比1.40、95%信頼区間1.14-1.72)、死亡リスク(ハザード比1.44、95%信頼区間1.11-1.87)の増加と相関しました。最も高いハザード比は、身体的フレイルとオーラルフレイルが重複している高齢者で認められました。
結論:OF-5は、日本人高齢者において身体的フレイル、身体障害、死亡の強い予測妥当性を示しました。このアセスメントツールは様々な場面で活用され、多職種連携を通して包括的な予防を促進することができます。
ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください
緒言
健康寿命の延伸と自立を維持するための戦略が必要であり、フレイルは極めて重要です。フレイルは全身状態と活動量減少と関連し、不利な健康結果に対する脆弱性を増加します。高齢者における歯と口腔機能は身体的フレイルと自立の喪失の予知因子として注目を集めています。我々は過去に歯と口腔機能の重複した低下、オーラルフレイルが、身体的フレイルのリスクファクターかもしれない事を確認し、死亡まで含めた健康アウトカムとの関連性を報告しました。老年歯科医学会は口腔機能低下症を提案しました。これにより、歯科医療従事者による、口腔機能低下高齢者に対しての包括的な検査、管理、介入が可能になりました。栄養や社会的側面を含む高齢者のオーラルフレイルに関連する因子は複雑です。そのため、高齢者を対象としたさまざまな地域活動や取り組みを通じて、歯科専門職との多職種での検査と介入が求められます。
フレイルの重要な因子であるサルコペニアでは、簡易的な検査方法の採用が、コミュニティレベルでのスクリーニングや幅広い介入を可能にしています。しかし、オーラルフレイルの検査方法は、客観的な指標が多く含まれており、歯科医療施設など限定した場所でしか検査ができません。そのため、オーラルフレイルの簡易的な質問表であるOFI-8がスクリーニングのために開発されました。歯磨き習慣や定期的な歯科受診などの口腔健康行動や社会活動などに関する質問も含まれており、健康的なライフスタイルにむけて意識と行動を変容させるための教育的な影響があるかもしません。しかし、様々なシチュエーションで使用できるOFI-8よりも簡易的な検査方法が求められています。OFI-8はあくまでスクリーニングのために使用されるものであり、ハイリスク者は歯科医療機関で十分なアセスメントを受けることが前提であるため、このツールは職種間の連携を促進すべきです。
我々はOF-5を開発し、オーラルフレイルの有病率と健康アウトカム(身体的フレイル、要介護、死亡)との関連性について検討しました。
実験方法
研究のセッティングと被験者
地域在住高齢者における健康な加齢に影響する重要な因子を調べるために、柏市で行われた縦断研究のデータを使用しました。柏は都会と田舎が入り交じった地域です。2012年に65歳以上の障害を有しない12000名がランダムに選ばれ、郵便で招待しました。トータルで2044名の高齢者(男性1013名、女性1031名)が参加に同意しました。参加者は男女それぞれの地域分布を代表していました。ベースラインデータを2012年の9月~11月の間に収集しました。
加えて、フォローアップを2013、2014、2016、2018、2021年に行い、オーラルフレイルと身体的フレイル(新規移行)、オーラルフレイルと不利益な健康アウトカム(身体的障害と死亡)の縦断的な関連について検討しました。参加者は、介護保険請求データベースを使用して2012年9月から2021年8月までフォローアップされました。認知機能低下(MMSE18未満)、データの欠落がある場合データを除外しました。さらに、ベースライン時にすでに身体的フレイルであった被験者を、フォローアップ期間中に新規に身体的フレイルに移行した場合の解析から除外しました。図S1に被験者の選択と研究の流れを示します(S1が発見できませんでした)。
OF-5
本研究では、オーラルフレイルを「不利な健康なアウトカムのリスクを増大させるかもしれない、歯や口腔機能のささいな低下の重複」と定義しました。我々は、OF-5をオーラルフレイルの客観的計測の過去の提案に基づいて開発しました。歯科医療現場である必要が無く、コミュニティレベル、高齢者によっても検査が可能です。OF-5は5つの測定項目があります(表1)。歯の減少、咀嚼困難、嚥下困難、口腔乾燥、滑舌低下です。20本未満の残存歯の被験者は歯の減少に振り分けられます。咀嚼困難、嚥下困難、口腔乾燥は、基本チェックリストからの質問を利用して検査します。残存歯数と発音口腔機能は、歯科医師の管理下でトレーニングされた歯科衛生士が検査します。発音口腔機能は、オーラルディアドコキネシスのタ音で検査します。被験者は5秒間できるだけ速くタを反復発音します。発音数のカウントはデジタルカウンターを用いて行いました。毎秒6.0回未満の被験者を滑舌低下に振り分けました。トレーニングを行った歯科衛生士が歯科医師の管理下で口腔の試験を行いました。全ての歯科スタッフは事前にワークショップでトレーニングしました。
アウトカム
フレイル
CHS基準によると、身体的フレイルは体重減少、疲労感、身体活動低下、筋力低下、歩行速度低下で定義されます。これらのあてはまらない被験者はフレイルではなく、1つまたは2つ該当する場合、プレフレイル、3つ以上で身体的フレイルと考えられます。5つの項目による検査方法は過去に報告されています。毎回のフォローアップ時に新規にフレイルとなったかを評価しました。フレイルになった最初の時をフォローアップ年数で定義しました。
身体的障害と死亡
身体的障害は介護保険のための新たな要求です。介護保険サービスは、日本での身体的、精神的障害の場合に給付を受ける資格を有する40歳以上のすべての成人に提供されます。日本の介護保険の承認機関は被保険者の心身の状態を定期的に調査し、一般医の意見書に基づいて審査します。依存と判定された高齢者は7つのカテゴリー、2つは要支援、5つは要介護に分類されます。本研究では柏市の介護保険請求データベースを使用し、身体障害により新たに認定を受けた被験者を確認しました。ベースライン時には自立でしたが、その後介護認定を受けた人は被験者として採用されました。ベースライン時の調査から介護認定をうけた日までの自立期間を計算しました。死亡も介護保険システムを利用して評価し、転居者については転居日までの追跡期間を定義しました。
共変数
共変数には、年齢、性別、BMI、教育レベル、同居人の有無、年収、MMSEによる認知機能低下、GDS15によるうつ徴候、GPAQ(世界標準化身体活動質問票)による運動習慣、食生活の多様性、サプリメント、アルコール、喫煙習慣を含みました。慢性的な基礎疾患(高血圧、糖尿病、高脂血症、骨粗鬆症、悪性新生物、脳卒中、慢性腎不全、心疾患)のデータはインタビューで得ました。
統計解析
全ての統計解析はSPSS29.0を使用し、有意水準は5%としました。
OF-5と身体的フレイルのベースライン時の相関はロジスティック回帰分析で検討しました。ベースライン時のOF-5とフォローアップ中の身体的フレイルの新規発生の縦断的な関連は、Kaplan-Meier曲線とCox比例ハザードモデルを使用しました。同様に、ベースライン時に身体的フレイルとオーラルフレイルの重複と、身体障害および死亡率との縦断的な関連を調べました。オッズ比とハザード比は単変量と多変量モデルで計算されました。多変量モデルでは、年齢、BMI、教育レベル、認知機能、うつ徴候、食事の多様性スコアにより調整しました。また、性別、同居人の有無(独居または同居)、低年収(家庭あたり140万円以上か未満か)、運動習慣の有無、飲酒習慣の有無、喫煙習慣の有無、慢性的な基礎疾患のカテゴリ変数でも調整しました。共変量の欠損値をインプットするために、完全条件指定(連鎖式)を用いた多重インピュテーションが適用され、10個のデータセットが作成されました。
結果
被験者
ベースライン時調査に参加した2044名の被験者のうち、9名をデータ欠損のため除外し、残り2031名(平均年齢73.1±5.6歳、女性50.4%)をベースライン時の横断的な解析と不利な健康アウトカム発生の縦断的解析に使用しました。加えて、208名の被験者が除外されました。204名がベースライン時に身体的フレイルであり、4名が身体的フレイルのデータ欠損でした。さらに417名がフォローアップに参加しませんでした。そのため、1419名の被験者(回答率77.3%、平均年齢72.5±5.4歳、女性50.2%)のデータを使用し、OF-5と身体的フレイルの縦断的関連を検討しました(追加図1)。
ベースライン時の特性とOF-5によるオーラフレイル
表2に被験者の特性を示します。オーラルフレイルを有する高齢者は(そうでない群と比較して)、より高齢で、女性比率が高く(有意差はない)、教育歴が短く、独居、低年収、運動習慣、飲酒習慣に乏しい、うつ傾向が高く、わずかに認知機能が低下していました。さらに、オーラルフレイルを有する場合、高血圧、東京病、骨粗鬆症、悪性新生物、心疾患の既往が有意に認められました。しかし、喫煙習慣、食生活の多様性、BMI、高脂血症、慢性腎不全はオーラルフレイルの有無で有意差が認められませんでした。
OF-5と身体的フレイル
OF-5と身体的フレイルの横断的、縦断的関連について表3について示します。ベースライン時に2031名中204名(10%)が身体的フレイルであり、1419名中274名(19.3%)がフォローアップ期間中にあらたに身体的フレイルになりました。多変量モデルで調整後にOF-5の4アイテム、歯の減少以外はフレイルのオッズ比とハザードが高く、有意に関連しました。加えて、これら5つのOF-5項目の重複数と身体的フレイルとの関連は、横断的解析でも縦断的解析でも、2つ以上の項目が当てはまる場合にのみ有意でした。そのため、OF-5で2つ以上該当するものをオーラルフレイルと定義しました。2031名の被験者中799名(39.3%)がOF-5でオーラルフレイルと判定されました。オーラルフレイルを有する高齢者は、ベースライン時に身体的フレイルのオッズ比が有意に増加し、フォローアップ期間中に新たに身体的フレイルに移行するハザード比が有意に増加しました。
オーラルフレイルと不利な健康アウトカム
OF-5で判定されたオーラルフレイルと、9年間における身体的障害と死亡との関連を解析したところ、フォローアップ期間中に400名(19.7%)が身体的障害、248名(12.2%)が死亡しました。図1に、オーラルフレイルありなし、オーラルフレイルと身体的フレイルありなしでの身体障害、死亡のKaplan-Meier曲線を示します。
オーラルフレイルを有する高齢者は、多変量モデルで調整した際にも身体障害と死亡が有意になりやすい結果となりました(表4)。身体的フレイルはなくオーラルフレイルを有する高齢者で、身体的障害または死亡のハザード比の有意な増加が認められました。さらに、身体的フレイルとオーラルフレイル両方を有する高齢者で最も大きなハザード比を認め、身体的フレイルを有するものにおいても、オーラルフレイルが不利な健康アウトカムのハザード比を増加させる事が示されました。
考察
オーラルフレイルは、歯および口腔機能の同時的なわずかな低下を指し、不利な健康アウトカムに寄与する可能性があります。OF-5は実用的なオーラルフレイルのチェックリストであり、臨床の現場でもコミュニティ活動においても、高齢者が自己評価できるように開発されました。我々は、地域在住高齢者において、OF-5の不利な健康アウトカムに対する予知能力を評価しました。その結果、本研究の母集団では、オーラルフレイルの有病率が高く、身体フレイルとその新規発症率が有意に高い事が示されました。さらに、オーラルフレイルに新規移行した人は、身体障害、死亡のハザード比も大きくなりました。
OF-5は咀嚼困難、嚥下困難、口腔乾燥の自己記入質問表をを含みます。これらの質問は、日本の介護予防とフレイル評価の基本チェックリストで広く使用されています。加えて、咀嚼と嚥下困難は、2020年に新たに施行された高齢者の保健・介護予防事業の、総合的な実施に使用される「高齢者のための15問の質問票」に含まれています。したがって、高齢者の健康診断でも評価されます。さらに、これら3つの質問はそれぞれフレイルと相関しており、ケアの必要性と死亡の予測については、本研究の結果と一致しています。そのため、身体アウトカムについての一般化可能性と予測妥当性により、OF-5中に3つの自己評価質問が含まれるのは合理的です。
OF-5は2つの客観的指標が含まれています。つまり、「残存歯が20本以下」と「オーラルディアドコキネシスにより評価された滑舌低下」です。単変量解析では、残存歯数とフレイルとの間に関連が認められましたが、年齢とその他の因子調整後には有意差を認めませんでした。にもかかわらず、咀嚼困難はリスクの有意な増加が認められ、定期的な歯科受診を通じた義歯のメンテナンスが重要かもしれない事が示唆されました。さらに、日本では、歯の減少と不健康上の悪影響のリスクの高さとの相関関係が広く研究されています。残存歯数が口腔機能に与える重要性を考えると、新しい質問としてOF-5に組み込むのは適切です。
歯科医療従事者が残存歯数を評価しましたが、地域の医療提供者は求められる専門知識を有していないかもしれません。そのため、高齢者が完了出来る自己回答式質問表の開発が必要です。自己回答式の残存歯数は日本では広く使用されており、その妥当性は過去に対応されていますが、高齢者を対象としたさらなる研究が必要です。
述べた通り、OF-5はオーラルディアドコキネシスのタ音で検査される発音と口腔運動スキルが含まれています。口腔機能は様々な要因を含み、この口腔運動スキルは他の4つの質問ではわからない重要なものです。さらに、オーラルディアドコキネシスは様々な身体的アウトカムと関連しており、介入により改善も容易です。そのため、高齢者の気付きと行動変容を促進することも期待されます。オーラルディアドコキネシスは、装置やスマートフォンのアプリがなくても評価出来るので、地域医療の現場や住民主導の活動で利用することが可能です。そのため、オーラルディアドコキネシスをOF-5の1つに含めるのは合理的で重要です。全体として、本研究での知見はサンプル特有ではなく一般化できるものであり、5つの質問それぞれと身体的アウトカムの関連を示した過去の研究との類似性で裏付けられています。OF-5は地域在住高齢者においてオーラルフレイルの有病者率は39%であり、身体障害と死亡に対する顕著なハザード比の高さが認められました。この関連は身体的フレイルではない高齢者でより強い結果でした。しかし、身体的フレイルを有する高齢者でさえ、オーラルフレイルがあればハザード比が増加しました。本研究では、身体的フレイルを有する高齢者は10%だったので、身体的フレイルの前に移行するオーラルフレイルを初期にみつけることは重要です。コミュニティ活動や医療環境においてオーラルフレイルに対処し、歯科医療に包括することがフレイルや不利なアウトカムのリスクを減らすかもしれません。日本では、口腔機能低下症が提案され、口腔機能管理が保険でカバーされています。そのため、歯科介入システムが確立されています。しかし、自己評価質問表を含む代わりの指標についての研究は今後必要です。OF-5によるオーラルフレイルは、口腔機能低下症の検査のような歯科医療システムは必要なく、コミュニティ活動内で高齢者により評価することができます。
本研究の強みは、サンプルサイズが大きく、フォローアップ期間が長かったため、不利な健康アウトカムの追跡調査率が高かった事です。しかし、limitationはあります。いくつかの交絡で調整した多変量モデルですが、計測していない交絡が本結果に影響している可能性があります。加えて、地域在住高齢者はランダムに選択したにも関わらず、健康ボランティア効果が母集団の代表性に影響を与えた可能性があります。追跡調査をすべて欠席した高齢者のフレイル移行を追跡調査できなかったことが、生存バイアスによるフレイル発症率の過小評価につながった可能性があります。最後に、本研究は縦断コホート研究なので、因果関係の解明は今後のランダム化コントロール試験が必要です。
本研究では、新しいオーラルフレイルのアセスメントツールであるOF-5を紹介しています。OF-5は臨床現場は勿論コミュニティレベルにも適しています。地域在住高齢者において、OF-5によるオーラルフレイルの有病率は39%でした。オーラルフレイルは、身体的フレイルの割合の高さと相関し、身体障害、死亡のハザード比を増加しました。これらのデータは新規に発症したオーラルフレイルが、地域居住高齢者のフレイルや不利な健康アウトカムの発生にも関係しており、特に身体的フレイルを有する高齢者にとって緊急であることを示しています。
まとめ
前回の論文と今回の論文では、板橋と柏での高齢者のOF-5によるオーラルフレイル有病率を調べていますが、どちらも大体35~40%という所でした。年齢により有病率は高まりますので、より高齢化が進んだ過疎の村などではより高い数字になるでしょう。
前回の論文では、オーラルフレイルありなしで、食事の多様性に有意差が認められましたが、今回は有意差は認められませんでした。日本人で同じアセスメントツールを使用しています。前回は食事の多様性が乏しくなっている事が重要であるという切り口で、大々的にフィーチャーされていたのですが、そこまでではないのかもしれません。ここら辺は今後の研究が必要でしょう。
オーラルフレイルがあると、ない人と比較して将来的な介護が必要なレベルの障害発生がハザード比1.40、死亡が1.44となります。オーラルフレイルと身体フレイルがない人と比較して、身体的フレイルのみある場合の障害発生が2.22、死亡が2.22とやはりかなりリスクが高くなりますが、そこにオーラルフレイルが加わると2.87、2.79とさらにリスクを上乗せするイメージになるようです。これからも、高齢者の40%程度が有しているオーラルフレイルを予防する、またはオーラルフレイルから脱却することが、健康寿命の延伸に貢献する可能性が高まると言えるでしょう。自分もたまに自分の唾液でむせることが多くなってきたと感じているので、シャキア訓練をやりたいと思います!