口腔機能低下症測定装置、何を買えばよいのか?
口腔機能低下症の診断
口腔機能低下症の診断は
口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下の7つの下位症状のうち、3項目以上該当
となりますが、口腔機能低下症を診断するためには必ず機器を購入する必要があります。
ちなみに当院も買わないと、と思いながらまだ購入しておりません。
もう算定できるようになってある程度経つわけでそろそろ重い腰をあげないと、と思いまして、今回調べてみることにしました。
購入しないといけない機器
口腔機能低下症を算定するためには必ず以下の3つの機器から1つは購入しないといけません。
咀嚼機能
グルコセンサーGS-II
https://www.gcdental.co.jp/sys/data/item/1491/
グミゼリーを20秒咀嚼後、それを吐き出させて測定します。
咬合力
デンタルプレスケールII
https://www.gcdental.co.jp/sys/data/item/1559/
感圧フィルムを咬合させた後にスキャナーで咬合状態を読み取ります。
舌圧
JMS舌圧測定器
https://www.gcdental.co.jp/sys/data/item/1197/
プローブを口腔内に挿入して舌で押させることにより舌圧を測定します。
どの機器を選ぶのか
どれもそれなりに初期投資が必要なわけですが、ではどれを買うのが最も効率的なのでしょうか?
折角買ったのに口腔機能低下症とあまり診断できない機器を買うのは開業医としてはあまり得策とはいえません。
この3つの検査で検出域に差があるかは検討すべきでしょう。
文献ベースで検索すると3つほど引っかかってきました。
一般的な歯科医院の場合
太田 緑 他
地域歯科診療所における口腔機能低下症の割合
老年歯学 33 79-84,2018.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/33/2/33_79/_article/-char/ja
東京歯科の櫻井先生の教室の研究です。
東京都のとある地域歯科診療所における外来患者において口腔機能低下症の割合がどれぐらいいたかを調査した報告となります。
この研究によると全体では49.2%が口腔機能低下症と診断されました。
この調査では20代から80代までの患者さんを調査していますが、20~30代においても30%ぐらいが口腔機能低下症と診断されています。
口腔機能低下症はある程度高齢者をターゲットとしているわけですが、若い層でも実際は該当してしまうというのは驚きです。
食生活の変化などによる口腔周囲の未発達などが影響しているのでしょうか?
肝心の機器別の検出率ですが、
舌圧低下 21.2%
咬合力低下 13.2%
咀嚼機能低下 7.9%
舌圧の検出率がトップ、舌圧と咀嚼機能では3倍弱の検出率の差があります。
勿論ですが、年齢が高くなるにつれて口腔機能低下症と診断される割合は増加して80代ではほぼ100%ですので、こういった通院可能な患者さんでも70代以上であれば口腔機能低下症と診断できる可能性は高い、といえそうです。
高齢者にターゲットを絞った場合
では、肝心の高齢者にターゲットを絞った場合はどうなるのかという事ですが、
尾崎由衛 他
高齢者施設利用者における口腔機能低下症罹患率に関する検討
老年歯学 33,350-357,2018.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/33/3/33_350/_article/-char/ja
を読んでみると、
やはりこういった高齢者では検査不可の人がある程度の割合でてきています。
グループホーム入所者が最も多いためかと考えられます。
しかし、そういった検査不可項目を非該当としても89.8%が口腔機能低下症と診断されています。
ただし、この報告は咬合力低下を残存指数19本以下としており、プレスケールを使用していません。また、咀嚼機能低下においてもグミゼリーを簡易な粉砕度で点数をつけており、グルコセンサーを使用していません。そのため実際、保険で義務づけられている検査を行ったのは舌圧だけです。
この方法では
咬合力低下が71.6%
咀嚼機能低下が58.0%
舌圧低下が71.6%
という検出率になっています。
また舌圧については検査不能な割合は10%、咀嚼機能については13.6%でした。
まとめると、
高齢者においても検出率が高く、不可が少ない舌圧測定
が今現在では最も開業医向けと考えられます。
基準は変わる可能性がある
口腔機能低下症の診断基準は今後変わる可能性が高いと思います。
実際改訂にむけた中間報告が出されてます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/33/3/33_299/_article/-char/ja
ただし、これを読んでいても舌圧の基準値についてはある程度エビデンスが蓄積されているため、変更の可能性はなさそうです。つまり今後もこの検出率は維持されると考えても良さそうです。
他の咬合力や咀嚼機能についてはまだ検査手法や基準値などについて検討が必要のようで、今後変更される可能性はあると思います。
ファイナルアンサー
文献ベースでみてみると、今現在の時点では
JMS舌圧測定器を購入するのがもっとも口腔機能低下症を診断できる可能性が高い。
JMS舌圧測定器はつい先日新しいモデルになりました。
USB接続が可能になり、PC上のソフトウェアに舌圧波形が表示できるようになったみたいです。
http://orarize.com/zetsuatsu/download/zetsuatsu_catalog.pdf
ただし、この測定器も前歯部がない場合どうやってプローブを把持するのかとか、色々検査手法の均一化が難しい可能性があります。
自分も何回かやってみたことがありますが、高齢認定症患者などに指示がはいらないことも多かったです。
まあ、それでも検出率やコストを考えると舌圧測定器が優れていると考えてもよいのかな?と思いました。
Comment
各論文のJ-stageのリンクを貼ってもらえるとうれしいのですが、、、
わたがしさん、コメントありがとうございます。
ご希望通り、リンクを設定しましました。
よろしくお願い申し上げます。