普通の歯科医師なのか違うのか

糖尿病患者の根管治療歯は根尖部の透過像が起こりやすい?

 
この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

クインテッセンスを読んでいたら、糖尿病と歯周病の関連性についての特集があったのですが、その中で気になる内容がありました。糖尿病と根尖性歯周炎の関連性についてです。考えてみれば、これだって感染性疾患ですから、充分関係があっておかしくないわけです。そこで引用されている文献を読んでみることにしました。

Association between diabetes and the prevalence of radiolucent periapical lesions in root-filled teeth: systematic review and meta-analysis
Juan J Segura-Egea , Jenifer Martín-González , Daniel Cabanillas-Balsera , Ashraf F Fouad , Eugenio Velasco-Ortega , José López-López 
Clin Oral Investig. 2016 Jul;20(6):1133-41.

PMID: 27055847
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27055847

Abstract

Introduction: The question of whether diabetes mellitus can influence the outcome of root canal treatment (RCT) remains unclear. The aim of this systematic review and meta-analysis was to analyze scientific available evidence on the association between diabetes and the presence of radiolucent periapical lesions (RPLs) in root-filled teeth (RFT).

Methods: The review question was as follows: in adult patients who had endodontically treated teeth, does the absence or presence of diabetes result in an increase in the prevalence of RPL associated to RFT? A systematic MEDLINE/PubMed, Wiley Online Database, Web of Science, and Scopus search was conducted using the following MeSH and keywords: Diabetes Mellitus OR Diabetes OR Diabetic OR Hyperglycemia, AND Endodontics, Periapical Periodontitis, Periapical Diseases, Apical Periodontitis, Periradicular Lesion, Periapical Radiolucency, Radiolucent Periapical Lesion, Root Canal Treatment, Root Canal Preparation, Root Canal Therapy, Root Filled Teeth, Endodontically Treated Teeth. Seven studies reporting data on the prevalence of RPL associated to RFT both in diabetic and control subjects were included.

Results: After the study selection, seven epidemiological studies fulfilled the inclusion criteria, representing data from 1593 root canal treatments, 1011 in non-diabetic control subjects, and 582 in diabetic patients. The calculated pooled odds ratio (OR = 1.42; 95 % CL = 1.11-1.80; p = 0.0058) indicates that diabetic patients have higher prevalence of RFT with RPLs than controls.

Conclusion: Available scientific evidence indicates that diabetes is significantly associated to higher prevalence of periapical radiolucencies in endodontically treated teeth, being an important putative pre-operative prognostic factor in RCT.

Clinical relevance: Taking into account that diabetes is the third most prevalent chronic medical condition among dental patients, endodontic providers should be aware of the relationship between the outcome of endodontic treatment and diabetes.

目的:糖尿病が根管治療の結果に影響するかどうかはいまだはっきりしていません。本システマティックレビューとメタアナリシスの目的は、糖尿病と根充された歯の根尖透過像の存在との関連について、科学的に利用可能なエビデンスを解析する事です。

方法:歯内療法が行われた歯を有する成人において、糖尿病の有無により根充後の根尖透過像の割合の増加が起こるかどうか、が本研究のクエスチョンです。Diabetes Mellitus または Diabetes または Diabetic または Hyperglycemiaと Endodontics, Periapical Periodontitis, Periapical Diseases, Apical Periodontitis, Periradicular Lesion, Periapical Radiolucency, Radiolucent Periapical Lesion, Root Canal Treatment, Root Canal Preparation, Root Canal Therapy, Root Filled Teeth, Endodontically Treated Teethの検索用語を用いて、MEDLINE/Pubmed、Wiley Online Detabase、Web of Science、Scopus searchでの検索を行いました。糖尿病患者群とコントロール群両方の根充後の根尖透過像の割合を報告した研究が7つありました。

結果:検索の結果、7つの疫学研究が採用基準を満たしており、統合した結果、1593本の根管治療歯、1011名の糖尿病に罹患していないコントロール、582名の糖尿病患者でした。累積オッズ比は1.42(95%信頼区間1.11-1.80 p<0.0058)であり、糖尿病患者ではコントロールと比較して根充後の根尖病変が有意に高い割合であることが示唆されました。

臨床的意義:糖尿病は歯科受診患者が有する基礎疾患で第3位であることを考慮すると、根管治療を行う人は、根管治療の結果と糖尿病の関連性に注意するべきです。

ここからはいつもの通り本文を訳します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください

緒言

根尖性歯周炎は、歯髄があったスペースへの細菌感染による歯根の先端部周辺の炎症過程です。根尖性歯周炎に関連する骨領域の特徴は、X線画像上に根尖部当か領域が認められることです。根尖性歯周炎は、非常に頻度の高い問題です。アメリカでは、根尖病変のX線画像徴候は、全ての歯の4.1~5.1%に認められる事が明らかになっています。アメリカでの24年間における根尖性歯周炎の新規症例の発生率は、年齢により27~41%でした。ヨーロッパでは、根尖性歯周炎は34~61%の人にあり、歯の2.8~4.2%に認められ、年齢により増加します。根尖病変を有する歯の治療は、感染根管治療です。アメリカでは、4.8~5.5%の歯が根管治療歯であり、若い新兵の10%が根管治療歯を有している事が示されました。ヨーロッパでは、根管治療は約41~59%の人に行われ、歯の2~6.4%が該当すると推定されます。

根管治療が失敗した時、根尖領域の治癒は起こらず、持続的な根尖性歯周炎となります。持続的な根尖性歯周炎の特徴は、X線画像で根充された歯に根尖部透過像が起こることです。持続的な根尖性歯周炎の根尖部透過像の割合はアメリカでは31~36%、ヨーロッパでは24~65%です。歯根肉芽腫と歯根嚢胞は、持続的な根尖性歯周炎に関連する歯内治療由来の最も一般的な病変です。しかし、根充後の透過像のある程度は、持続的な根尖性歯周炎ではなく、不完全な治癒、瘢痕、または歯内治療由来ではない病的状態であることもあります。

持続的な根尖性歯周炎に関与する因子は、根管内の操作、例えば不適切な無菌操作、不十分な器具操作、暫間、最終修復物のリークのみならず、全身要因、例えば全身疾患に関連した炎症の誘発や免疫の低下などもあります。

根尖性歯周炎に関連する可能性の全身疾患の1つに糖尿病があります。糖尿病は高血糖を主徴とする代謝異常の一群であり、膵β細胞の機能不全によるもので、インスリン分泌不全および/または肝臓と筋肉におけるインスリン抵抗性を伴います。糖尿病患者には免疫細胞の機能低下が起こり、単球、多核白血球から炎症を誘発するサイトカインが増加し、マクロファージからの成長因子が減少し、慢性炎症、進行性の組織破壊、組織修復能力の低下を引き起こします。加えて、糖尿病患者は高度糖化最終産物(AGEs)のレベルが上昇しており、AGEsは細胞表面の受容体と相互作用して組織の酸化ストレスを増大させ、炎症反応が上昇します。コントロールができていない糖尿病患者では、白血球機能低下と創傷治癒遅延で免疫反応がさらに低下します。結果的に、糖尿病患者の根管治療歯では、根尖病変の数や大きさが増加する事が予想されます。

1963年のBenderらによる研究から、いくつかの疫学研究では、根尖周囲の健康と根管治療の結果に対する糖尿病の影響が調査されています。大抵、これらの研究は横断研究で、X線画像的な検査のみ行っています。糖尿病は根管治療のアウトカムに影響するかどうかはいまだよくわかっていません。

本研究の狙い

本研究の目的は、糖尿病と根管治療の失敗との関連について、根充した歯の根尖周囲透過像の罹患率を調査し、システマティックレビューとメタアナリシスを行う事です。PICOは、根管治療歯を有する成人患者において、糖尿病の有無が根充歯の根尖透過像の割合の増加に寄与するかどうかです。

実験方法

文献検索

システマティックレビューとメタアナリシス作成のための一般的な過程により、まずは検索の方向性を構築するためにPICOを作成しました。採用、除外基準を定義し、研究を抽出、質を検討、データを抽出し解釈しました。

Diabetes Mellitus または Diabetes または Diabetic または Hyperglycemiaと Endodontics, Periapical Periodontitis, Periapical Diseases, Apical Periodontitis, Periradicular Lesion, Periapical Radiolucency, Radiolucent Periapical Lesion, Root Canal Treatment, Root Canal Preparation, Root Canal Therapy, Root Filled Teeth, Endodontically Treated Teethの検索用語を用いて、MEDLINE/Pubmed、Wiley Online Detabase、Web of Science、Scopus searchでの検索を行いました(表1)。

Journal of Endodontics、International Endodontic Journal、 Clinical Oral Investigations、Oral Diseases、 Oral Surgery、 Oral Medicine、 Oral Pathology、Oral Radiology and Endodontology、 Endodontics and
Dental Traumatology、 Australian Endodontic Journalと、関連する論文の参考文献についてはハンドサーチしました。

採用、除外基準

3人が、全ての論文のタイトルとアブスラクトをチェックしました。採用基準に適合しなかった論文は除外しました。残った全ての論文は、4人が独立して全文をレビューしました。採用基準は以下の通りです。(1)研究の種類:1980年1月~2016年3月までにパブリッシュされた疫学研究。(2)成人糖尿病患者と、非糖尿病コントロール群との比較。(3)根充済みの歯が対象。(4)根充歯の根尖周囲の条件が確立され、糖尿病群とコントロール群の根尖透過像の割合に関するデータが報告されている。

除外基準は以下の通りです。(1)研究のタイプが細胞培養や動物実験。(2)糖尿病患者のみの調査。(3)根尖透過性についてのX線所見がない。

研究の質とデータの抽出

関連する可能性のある研究のテキストを系統的に評価しました。データの抽出、統合、分析を行い、手法の質を評価しました。それぞれの研究について以下のパラメーターをThe Centre for Evidence-Based Medicine at Oxfordによるガイドラインに基づいて記録しました。著者の名前、パブリッシュされた日、研究デザイン、サンプルサイズ(被験者と根管治療歯数)、根尖部透過像の診断方法、糖尿病と根尖部透過像を伴う根管処置歯との関連についての主な結果、エビデンスレベル。

アウトカムと統計解析

コントロール群と糖尿病患者の根充後の根尖部透過像の割合についてのオッズ比を主なアウトカム変数、効果の指標として設定しました。累積オッズ比をMantel-Haenszelの方法で、95%信頼区間はRobins、Breslow、Greenlandの公式で算出しました。算出したオッズ比間の異質性をテストするために、Breslow-DayテストとI2テストを用いました。均一性をイラスト化するためにL’Abbéプロットを用いました。フォレストプロットはオッズ比の結果を表示するために使用しました。有意水準は5%としました。

結果

検索の流れについて図1に示します。最初の検索とハンドサーチにより、545の研究がヒットしました。重複(349)、1980年以前(16)を除外しました。タイトルとアブストラクトレベルでは180の研究が残りました。全文を検討したら16の研究が残りました。ここで9つの研究が以下の理由で除外されました。1つは歯周病に関するもの、6つがコントロールと糖尿病患者両方のデータが揃っていない、2つはコントロールと歯周病患者における根充歯の維持に関するものでした。

研究特性

最終解析には7つの研究が含まれます。表2に研究デザイン、被験者、サンプルサイズ、根尖透過像の診断方法、主な結果、エビデンスレベルを示します。根尖性歯周炎の診断におけるX線画像の基準を、提示されているものについて示します。2つの研究はStrindbergの基準を用いています。1つは、縦断的データと、監修しているエンドドンティストによる臨床、X線画像的な解析を用いています。他の3つはPAIシステムスコアを用いてます。

メタアナリシス

選択された研究それぞれにおいて、結果を抽出し、表にまとめ、記述統計量とオッズ比を算出しました(表3)。オッズが1より大きい場合、糖尿病患者の方が、コントロール群よりも根尖透過像を伴う根充歯の割合が大きい事を意味します。Breslow-Dayテストは有意差なしであり、これは、採用した研究のオッズ比には均一性があることを意味します(図2)。

さらに、異質性による研究バリエーションの割合はとても低い結果でした。Mantel-Haenszelの方法とRobins、Breslow、Greenlandの公式による累積オッズ比は1.42(95%信頼区間1.11-1.80)であり、算出した累積オッズ比は、1から有意に異なりました。フォレストプロットにおいて、メタアナリシスで算出したそれぞれの研究のオッズ比と全体的なオッズ比を示します(図3)。これらの結果から、糖尿病患者群は、非糖尿病群と比較して根尖透過像を伴う根充歯の割合が有意に高い事が示唆されました。

採用した研究の解釈と調査

採用した7つの研究がパブリッシュされた期間は1989年~2014年でした。しかし、6つについては2003年~2014年でした(表2)。1つは、2または3年のフォローアップ期間の縦断研究で、治療成功と失敗/不確定が比較されていました。残り6つは横断研究でした。7つ全体で1368名、コントロール730名、糖尿病患者319名でした(本文と表の数字がうまく一致しません)。

Falkらの研究では、長期糖尿病患者では、非糖尿病患者(21%)に比べ、根尖透過像を伴う根充歯の頻度が高かった(26%)と報告しています(オッズ比1.31 95%信頼区間0.85-2.01)。また、糖尿病女性群は、コントロールの女性軍と比較して有意に割合が高かったと報告しています。FouadとBurlesonは、531本の根管治療歯、72名の糖尿病患者を調査し、糖尿病患者の方が根尖部透過像の割合が高い傾向でしたが、統計的有意差は認めませんでした。にも関わらず、術前に根尖病変を伴う糖尿病患者の根充歯における根尖部透過像の頻度は、コントロール群と比較して交絡を調整後にも有意に高い結果でした。Brittoらによる研究では、99名(糖尿病患者56名)の根尖部の状態を、根尖部とパノラマX線写真を用いて調査しました。Strindbergの基準を根尖部透過像の診断に用いました。糖尿病患者群とコントロール群で、根尖部透過像を伴う根充歯の割合に有意差を認めませんでした(オッズ比1.09、95%信頼区間0.46-2.63)。しかし、2型糖尿病の男性は、根尖部透過像が残存しやすい傾向を認めました(p<0.05)。この研究では、1本以上根尖部透過像を有する割合が非常に高く、糖尿病患者で97%、コントロール群で87%でした。Segura-Egeaらは、38名のコントロール群と32名の糖尿病群において、根尖部のX線画像とPAIスコアシステムを用い根尖部の状態を調査しました。糖尿病患者の根充歯の83%に根尖部透過像を認めましたが、コントロール群では60%でした(オッズ比3.33、95%信頼区間 0.48-37.93)。López-Lópezらの研究では、良好にコントロールされた糖尿病患者とコントロール群での、根尖部透過像を伴う根充歯の割合を比較しました。この研究では、患者群とコントロール群の性別と年齢はマッチングされており、糖尿病患者群のHbA1cは6.5%以下です。根尖部の状態は、デジタルパノラマX線画像とPAIインデックスを用いて評価されました。糖尿病患者の根尖透過像の割合は46%、コントロール群(24%)のほぼ倍でした。しかし、統計的有意差は認められませんでした(オッズ比2.67、95%信頼区間0.76-10.06)。

Marottaらは、根尖部とパノラマX線画像でStridberg基準を用いて根尖部透過像を調査しました。彼らは、糖尿病患者の未処置歯における根尖透過像は10%で、非糖尿病コントロール群の7%と比較して有意に頻度が高い事を報告しています。しかし、糖尿病患者の根充歯の根尖部透過像の割合は46%で、コントロール群の38%と比較して統計的有意差は認められませんでした(オッズ比1.39、95%信頼区間0.81-2.39)。最後に、Marques-Ferreiraらによる研究では、糖尿病患者23名、コントロール23名において、根充歯の成功率を比較しています。根尖部の状態は、X線画像でPAIスコアシステムを用いて評価されました。根尖部透過像を伴う根充歯の割合は、両群間で統計的有意差を認めませんでした(オッズ比3.05、95%信頼区間0.84-12.48)。

考察

20世紀中盤から今日まで、歯内治療における感染と糖尿病の関連について、数多くの動物、ヒトでの研究が行われてきました。ヒトの研究において解析された歯内療法の変数は、根尖部透過像の割合、根管治療の割合、根管治療の結果、根充歯の根尖透過像のありなしの割合、非外科的な根管治療後の抜歯の割合などでした。今回の7つの研究結果は決定的なものではなかったですが、利用できるエビデンスから、糖尿病と、根尖透過像の割合の高さ、根尖透過像のサイズの大きさ、歯性感染の頻度の関連性が示唆されました。一方で、糖尿病と根管治療の割合の関連性についてはデータがまばらで決定的とはいえませんでした。最後に、いくつかの研究では、非外科的な根管処置の後の抜歯割合を解析することで、糖尿病と根管処置歯の生存の関連性について検討していました。ことらの研究の3つでは、明確に有意なオッズ比を認め、根管処置歯の寿命の短縮に糖尿病が寄与している事が示唆されました。4つの研究では、根管治療の縦断的な評価を行っています。Marendingらは、糖尿病はアウトカムに有意な影響を与える医学的問題の1つであると報告しています。他の3つの研究では、全ての歯の治療を考える時、糖尿病はアウトカムに影響しない事に賛同しています。FouadとBurlesonの研究では、術前病変のある歯のみを考慮し、多くの重要な交絡変数をコントロールした場合、糖尿病患者の歯は、治療後2年以上経過した時点で、不確実または失敗に有意に分類されました。

本システマティックレビュー、メタアナリシスの目的は、糖尿病と透過像ありなしの根充歯の割合の関連性を解析する事です。採用した観察疫学研究はアウトカム研究であり、2年以上のフォローアップを伴う縦断研究が1(エビデンスレベル2)、横断研究が6(エビデンスレベル3)でした。7つの研究の均一性は高く、研究間のばらつきは異質性によるものではなく、むしろ偶然のものでした。

このレビューに含まれる研究が発表された合理的な期間(1989年から2014年)は、比較の可能性を強化し、歯科の概念、材料、および/または治療法における重要な経時的変化などを考慮する必要はありません。

糖尿病と根尖病変を伴う根充歯の割合の関連について有意なオッズ比を示した研究はありません。しかし、Mantel-Haenszelの方法により算出した累積オッズ比では有意(オッズ比1.42、95%信頼区間1.11-1.80)であり、糖尿病が根尖透過像を伴う根充の割合と関連する事が示唆されました。利用できるエビデンスは、糖尿病と持続的な根尖性歯周炎の関連を支持している、結論づけられるかもしれません。この結果は、糖尿病患者は根尖部の修復が遅延しており、根充歯を喪失しやすいという報告と一致します。

根充歯の根尖部と糖尿病をリンクする生物学的メカニズムは以下の様なものかもしれません。(1)糖尿病は慢性炎症を起こしやすい。(2)糖尿病は組織再生能を低下させる。(3)糖尿病は免疫応答を低下させる。(4)糖尿病は骨代謝を低下させ、創傷治癒を遅延する。根管治療歯の根尖組織に炎症が起これば、糖尿病は免疫応答を弱め、根尖周囲の炎症が増悪、骨のターンオーバーと創傷治癒を変化させ、根尖性歯周炎の割合が増加します。

歯科の患者が有する医学的な慢性疾患で、糖尿病は第3位であることを考慮すると、歯内治療を行う者は、歯内療法のアウトカムと糖尿病との関連性に注意するべきで、糖尿病の状態を把握し、糖尿病患者にリスクを説明する必要があります。

結論

利用できるエビデンスから、糖尿病は根管処置歯の根尖透過像の高い割合と有意に相関する事が示唆されました。糖尿病と根管治療のアウトカムとの関連を調べるため、糖尿病患者における治療失敗のリスク上昇を決定するために、よくデザインされた前向きの研究が必要です。しかし、現時点では、糖尿病は根管治療において、重要な術前の推定予後因子と認識されるべきです。

まとめ

今回は7つの論文をメタアナリシスに採用していますが、その論文単体では多くは有意差がない状況です。また、本メタアナリシスでは異質性は低いという事でしたが、採用した論文の質は横断研究が殆どなのであまり高くないと言えるのではないでしょうか。つまり、このメタアナリシスだけから、糖尿病は根尖透過像が多くなる、とは言い切れないのでは、と思います。

ただそれでも95%信頼区間が1をまたがずにオッズ比1.42という結果になったのは価値があると思います。感染に弱く炎症が起こりやすい糖尿病と根尖病変は関連性があるだろうというのは理論的にも筋が通っています。もう1本引用文献があったので、今度はそれを読んでみたいと思います。

この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© 5代目歯科医師の日常? , 2024 All Rights Reserved.