普通の歯科医師なのか違うのか

CAD/CAMによる全部床義歯製作法とその物性に関するシステマティックレビュー

 
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5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

そろそろ義歯安定剤も煮詰まってきた、というか新しい論文がそこまでないので、次の興味あるところに行ってみたいと思います。以前CAD/CAMデンチャーに安定剤を使用したらどうなるか、という論文を読んで、CAD/CAMデンチャーに興味が出てきたので、今回からはCAD/CAMデンチャーの論文に入ります。今回は2021年アメリカからのシステマティックレビューを読みます。先ほどの安定剤の論文も引用されていました。図表もなく結構な長文となっています。

CAD/CAM Complete Denture Systems and Physical Properties: A Review of the Literature
Nadim Z Baba , Brian J Goodacre , Charles J Goodacre, Frauke Müller , Stephen Wagner 

J Prosthodont. 2021 May;30(S2):113-124. doi: 10.1111/jopr.13243.
PMID: 32844510

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32844510/

Abstract

Purpose: CAD/CAM complete dentures have increased in popularity and a wide variety of systems are currently available. These prostheses present many advantages for clinicians, technicians and patients. Subtractive manufacturing is used by most of the available systems while a few manufacturers use an additive manufacturing technique. This article describes the currently available systems and materials available for the fabrication of CAD/CAM complete dentures and reviews the literature relative to their physical properties.

Methods: A comprehensive review of the literature was completed to enumerate the currently available techniques to fabricate CAD/CAM complete dentures and discuss their physical properties. A search of English language peer-reviewed literature was undertaken using MEDLINE and PubMed on research articles published between 2000 and 2019. A hand search of relevant dental journals was also completed.

Results: The literature indicates the physical properties of CAD/CAM milled poly(methylmethacrylate) or PMMA as it is commonly described is superior to conventionally processed PMMA for the fabrication of complete dentures.

Conclusion: The incorporation of CAD/CAM technology into complete denture design and fabrication streamlines the clinical and laboratory processes and provides improved physical properties that enhance denture quality.

目的:CAD/CAMによる全部床義歯は人気が高まっており、様々なシステムが現在利用可能となっています。この補綴物は臨床に携わる人、技工士、患者に大きな利益をもたらしています。利用できるシステムの殆どは切削加工ですが、少ないですが積層造形法もあります。本研究は、CAD/CAMによる全部床義歯製作に現在利用できるシステムと材料を紹介し、その物性に関してレビューを行います。

方法:CAD/CAMによる全部床義歯を製作するために現在利用可能なテクニックを列挙し、物性を議論する事としました。2000年~2019年までにパブリッシュされた英語査読済み研究をMEDLINEとPubeMedを利用して取得しました。

結果:P(MMA)またはPMMAをミリングして製作された場合の物性は、従来のPMMAを重合することによる方法よりも優れている事が示唆されたました。

結論:全部床義歯の設計と製作にCAD/CAM技術を取り入れることで、臨床とラボのプロセスを合理化し、義歯の品質を向上させる物性の向上を提供する事が出来ます。

ここからはいつもの通り本文を適当に抽出して意訳要約します。誤訳もあり得ますので、気になったら実際の本文をご確認ください。

全部床義歯を製作するための全く新しい技術で重要な要因としてCAD/CAM技術の歯科活用があります。可撤式補綴に精通した歯科技工士の不足に伴うCAD/CAMの広範囲使用から、臨床医と技工士の双方がデジタル全部床義歯の製作にCAD/CAM技術を利用することを検討するようになりました。

デジタル歯科用語集によると、デジタルデンチャーとは、CAD、CAM、CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)を使用して、または自動化によって作成された全部床義歯のことです。CAEとは、歯科補綴物の設計プロセスにおいて、データの蓄積と解析を行う工学の分野と定義されています。

技工研究

Maedaらは、全部床義歯のデジタルを用いたデザインと製作法を調べる為に、3Dレーザーリソグラフィを初めて使用しました。彼らは歯列のプラスチックシェルと光重合レジンによる基礎床を作り、歯の色のコンポジットレジン材料で義歯を作製したのです(訳が不正確な可能性あり)。3年後、Kuwahataらは、CNC(Computerized Numerical Control)マシンを用いて、モデリングワックスを用いた義歯の削り出しによる可撤式補綴物の複製技術を改良しました。彼らの結論としては、更なる改良が必要であるというものでした。他の研究では、歯科医から提供された基礎床と咬合堤をスキャンしてCADソフトへ組み込みました。彼らはヴァーチャル義歯をデザインし、床と人工歯をプリントしました。Wuらはチタン床を製作するために、CAD/CAM技術と高速レーザーフォーミングシステムを統合しました。この方法は、金属床製作の時間とコストを削減することができると報告しています。

KanazawaらはCAD/CAMによる義歯製作過程のスピードアップと改良のために切削加工を用いました。人工歯のセットと現在使用中の義歯をスキャンし、CBCTを用いて患者の粘膜と中心位の情報を得ました。ヴァーチャル義歯は3DのCADソフトを用いてデザインされました。ミリングマシンで義歯床と人工歯をそれぞれ削り出し、接着する手法が採用されました。

2012年にGoodacreらは、3軸ミリングマシンによる透明プラスチックから切削されたCADCAMデンチャーの検証を目的とした最初の症例報告を行いました。人工歯はミリングで別に製作され、後から接着しました。ミリングされた義歯床は歯間乳頭を欠き、ミリングラインを認めましたが、臨床手順そのものが検証されました。著者らは、重合されたPMMAブロックを5軸の小型化されたCAMで切削する他の臨床実験も行っています。今回も手作業で人工歯を接着し、最終的な義歯を患者さんの口腔内に装着し、現在に至るまで臨床で使用されています。

複数の著者らは試適の重要性を認識、3Dプリントした試適用義歯を作る事を示唆しています。Inokoshiらは従来法で製作したろう義歯と3Dプリントした試適用義歯を比較し、両者ともに試適という目的には十分な正確性があると結論づけました(文献14)。しかし、患者、歯科医師両方が、従来法のろう義歯の方が3Dプリント試適用義歯よりも審美性と安定性が高いと評価しました。BeginらはCAD/CAMまたは3Dプリンタを用いてワンピースのレジン人工歯を製作しました。この人工歯を従来法の咬合床に排列し、フラスク埋没を行いました。著者らは、製作法や使用材料の毒性などに関してさらなる改良が必要であると報告しました。

Babaらは全部床義歯と部分床義歯の製作に最も一般的に使用されているデジタルシステムを取り上げ、デジタル全部床義歯の製作手順をステップ毎に解説しました。最近のレビューでは一般開業医でも利用可能なCAD/CAM全部床義歯システムが紹介されています。

CAD/CAM総義歯に関する論文の増加や、この技術を使用する企業の増加は、全部床義歯製作へのデジタル技術の応用への関心が高まっていることを明確に示しています。そのため、現在利用可能な製作プロセスをまとめることは重要です。結果として、本研究の目的は、CAD/CAM義歯を製作するのに使用する材料と手法に関する情報を提供することです。

CAD/CAM全部床義歯を製作する手法

AvaDent

AvaDentはCAEと切削加工による全部床義歯製作を採用していますが、試適義歯に関してはミリングと3Dプリント両方に対応しています。2タイプの義歯を提供しています。ミリングした義歯床に他社製の人工歯を接着する方法と、AvaDent XCLというモノリシックのディスクを使用して義歯床と人工歯を1塊でミリングする方法です。AvaDent XCLには、人工歯が単色のXCL-1と、デンチン色の上に透明性の高いエナメル色が乗るXCL-2があります。

全部床義歯に加えて、AvaDentシステムは、ミリングされた基礎床、即時義歯、シングルデンチャー、顎補綴、インプラントオーバーデンチャー、ボーンアンカードの全部床義歯などを提供することができます。AvaDentの義歯は3回のアポイントで完成することができます。

1回目のアポイント

AvaDentシステムに必要な臨床のレコードを得るためには色々な方法がありますが、最もポピュラーな方法は以下の4つです。

(1)リファレンステクニック
シリコーン印象材を用いて辺縁形成→理想的な咬合高径上での咬合採得をしながら内面の印象を行います。

(2)AvaDent-Wanger EZ guide プロトコル
AvaDent-Wanger EZ guideはプリントされた基礎床に、ピンクベースプレートワックスに似た材料で作られたろう堤にプリントされた上下前歯をセットします。この特別なピンクのワックスは人工歯とよく馴染み、ろう堤から撤去することなく人工歯を動かす事ができます。上顎のガイドは基礎床にミリングされた臼歯が組み込まれた形をしています。下顎のガイドは6本の前歯がワックスの中にセットされ、臼歯部はろう堤という、従来法ににた形態をしています。基礎床と人工歯は、業者から提供されたSTLファイルからミリングすることも3Dプリントすることも可能です。人工歯は全部床義歯の平均値と原則に基づいた位置に排列されています。

(3)口腔内スキャン
無歯顎顎堤をIOSでスキャンし、そのデータから試適のためのWagner EZ Guidesを作製します。

(4)従来の記録法
通常の方法で印象、咬合採得、人工歯排列、ろう義歯試適まで行い、修正が終わったろう義歯をスキャンしてAvaDentにデータを送る事で義歯を完成させます。

2回目のアポイント

色々な種類の試適義歯をこのアポイントでは使用する事が出来ます。1つ目の選択肢としては前述したAvaDent-Wanger EZ guideです。2つの選択肢はVitaシェードの1つでミリングされた義歯床も人工歯も白い試適用義歯です。3つ目の選択肢はミリングした基礎床に人工歯をワックスの中に埋めて人工歯を動かす事を可能にしたものです。修正が加えられた試適用義歯をスキャンして最終義歯に反映させます。4つ目の選択肢は3Dプリントされた単色の試適用義歯を使用する方法です。

3回目のアポイント

従来の義歯と同じ方法でCAD/CAMで製作された全部床義歯を装着します。フィットチェッカーまたはPIPなどを使用して粘膜と内面の適合を調整します。必要であれば口腔内で咬合接触を確認して調整します。リマウントによる咬合調整も可能です。従来の義歯と同様に、最終的にリマウントして咬合調整を行う前に、義歯の適合を若干高めておく必要があります。

The Ivoclar digital denture

Ivoclar Vivadentのシステムも切削加工による完成義歯の製作とミリング、プリント両対応の試適義歯を利用できます。3回または4回のアポイントによるワークフローとなります。

3回アポイントワークフロー

1回目のアポイント:3種類の方法があります。

(1)現在使用中の義歯を複製するために、シリコーンゴム印象材による辺縁形成と精密印象採得を行い、中心位における咬合採得も行います。

(2)熱可塑性の印象用トレー(Accudent XD)を用いてシリコーンゴム印象材による印象を行い、中心位トレーを用いて予備の中心位記録も行います。

(3)上下の模型を製作し、中心位トレーで予備の中心位記録を行います。

技工所はミリングまたはプリントで試適用義歯を製作することができます。ミリングは白色モノリシックのレジンを使用します。人工歯と床は同じ色になります。プリントによる試適用義歯は複数の3Dプリンタを使用できます。床と人工歯はわけてプリントされPMMAで接着されます。

2回目のアポイント

維持、安定、リップサポート、正中線、前歯部、発音、審美性、咬合高径、咬合平面などを評価するためにミリング、またはプリントされた試適用義歯を使用できます。もし、義歯粘膜面や咬合接触に調整が必要なら、再印象または新しい中心位記録を採得し、技工所が再スキャンできるようにする事が推奨されています。最終的な義歯の形態や咬合が決定された場合、Ivoclarのシステムは以下の2つの方法で最終義歯を製作します。

(1)重合済みのP(MMA)(Ivobase CAD)から義歯床を削り出し、人工歯は別の材料から削り出します。人工歯と義歯床の接着は特別なPMMA(Ivobase CAD bond)を使用します。完成義歯は研磨され歯科医院に送られます。

(2)2色CADディスク(Ivotion)からモノリシックな義歯をミリングします。片方は高衝撃最適化PMMAでできた床用材料、もう片方はフィラーを含まない高架橋PMMAでできた人工歯用材料です。3shape dental systemソフトウエアでデザインを行い、2色ディスクをミリングします。ミリングが終了したら研磨を行い歯科医院に送られます。

3回目のアポイント

従来の義歯と同様な調整を行います。患者は定期的なフォローアップとメインテナンスのために、必要に応じて受診します。

4回アポイントワークフロー

1回目のアポイント

熱可塑性の印象トレー(Accudent XD)、または選択したディスポーザブルなトレーを使用して上下顎の予備印象を行います。予備印象はシリコーンゴム印象材またはアルジネート印象材を用います。業者から提供された中心位トレーにより予備の中心位を採得し、咬合高径を推定することが出来ます。リップルーラーはパピラメーターとしても知られており、上唇の長さ、歯の長径、中切歯の切縁の位置などを記録する事が出来ます。鼻翼幅径を測定します。リップルーラー、鼻翼幅径、中心位トレーから得られた情報により、咬合床付きのカスタム印象トレーを製作することができます。

ここで、UTS CADデバイス(簡易的なフェイスボウ)を中心位トレーと接続することにより、カンペル平面、瞳孔間線、を計測できるようになります。予備印象、中心位トレー、カンペル平面、瞳孔間線、鼻翼幅径などの情報が技工所に送られます。

技工所では、予備印象と中心位記録をスキャンして、ヴァーチャル模型を構築します。カンペル平面などから技工士は咬合平面を決定しやすくなります。技工士は咬合床つきのカスタマイズされた印象トレーを製作します。咬合床は口腔内でゴシックアーチ描記ができるGantometer CADの安定のために取り外す事が出来ます。このトレーはPMMAブロックを切削加工して製作します。

2回目のアポイント

ミリングされたカスタムトレーは、トレーの粘膜面が接着剤でコートされた後に試適します。トレーの周囲をシリコーンゴム印象材で辺縁形成した後に粘膜面を印象採得します。UTS CADデバイスをカンペル平面どの確認のために再度使用します。患者の上顎切歯切縁の位置、リップサポート、正中線、口唇線、咬合高径などを上顎咬合床で確認します。Gantometer CADによりゴシックアーチ描記を行い中心位を決定したのちに、上顎と下顎を固定します。

消毒を行った後に、技工所に送り、スキャンを行います。技工士はヴァーチャル模型を分析し、Ivoclar Vivadent software libraryから人工歯を選びます。スピーやウイルソンの彎曲などを考慮してヴァーチャルな排列が提案されます。提案された排列は歯科医師と患者の要望などを元に修正されます。

3回目のアポイント

PMMAレジンをミリングしたモノリシックな試適義歯を用いて、発音、審美、咬合高径、咬合と維持などを確認しました。ここで、正中線、人工歯の位置、中心位、咬合高径、などの修正は直接試適義歯に行うか、最終義歯をミリングする前にミリングセンターに指示する事ができます。

義歯床は重合されたレジンディスク(Ivobase CAD disk)をミリングします。既製品、またはミリングした人工歯をIvobase CAD bondを使った義歯床と接着後に研磨をします。

4回目のアポイント

従来の義歯と同様な調整を行います。フィットチェッカーまたはPIPなどを使用して適合を調整します。咬合は必要なら口腔内で調整を行います。また、リマウントによる咬合調整も可能です。

DENTCA CAD/CAM dentures

Dentcaは3Dプリントで義歯床を製作し、人工歯と接着します。Dentca人工歯は重合前に義歯床と接着します。このシステムは全部床義歯、部分床義歯、シングルデンチャー、即時義歯などにも適応しています。

1回目のアポイント

システム独自の2つの片顎印象トレーを使用し、最終印象と上下顎の顎間関係を記録します。シリコーンゴム印象材による辺縁形成と内面の精密印象を行います。咬合高径と中心位の記録の前に、#15cのメスでトレーの臼歯部と前歯部の境界線に沿って印象材をスライスし、間欠的に強くゆらしたり引っ張ったりしてトレーを分離させます。トレーの前歯部は顎間関係記録時に再度位置が調整されます。

通常のゴシックアーチ描記装置とは逆で、上顎トレーに描記板、下顎トレーに描記針が設置されます。メーカーから提供された粘着保持型のトレーシング材(EZ-Tracer)を上顎の平らな描記板に固定します。描記板はDentca Jaw Gaugeを用いて理想的な咬合高径を得るために上下に調整可能となっています。下顎運動(前方、側方)を記録します。ゴシックアーチは矢のように描かれ、その頂点は中心位を意味します。トレーの上顎と下顎の前方六角板を患者の口腔内から取り出し、丸いアクリル樹脂のバリで矢印の下にディンプルを形成します。中心位の位置を記録するために、トレーを再び口腔内に装着し、セントラルベアリングピンがディンプルに収まるまで下顎を誘導します。その後顎間関係記録材を上下のトレー間に注入します。

メーカーから提供されたリップルーラーは、上唇の長さ、上顎中切歯切縁の位置を決定するために使用します。精密印象した2つのトレーと顎間関係記録などを会社におくりスキャンします。ヴァーチャルデザインが歯科医に送られ、試適義歯をプリントする前にデザインを評価します。

2回目のアポイント

上下の試適義歯をプリントし、試適を行います。粘膜面、人工歯、咬合接触などは必要があれば調整可能です。もし修正するなら、シリコーンゴム印象材で印象、顎間関係記録を取り技工所へ送る事が推奨されています。

最終義歯はどのような3Dプリンタでもプリントすることができます。義歯床をまずプリントし、ついで人口歯をプリントし、PMMAを使用して接着します。研磨して装着に備えます。

3回目のアポイント

従来の方法と同様に義歯の装着を行います。ィットチェッカーまたはPIPなどを使用して適合を調整します。咬合は必要なら口腔内で調整を行います。また、リマウントによる咬合調整も可能です。

Amann Girrbach AG

Amann Girrbach AGは技工士のためにデザインされたシステムで、Ceramil full denture system(FDS)を使用します。Amann GirrbachはVitaとMerzと協力、統合しており、歯科医師にさらなる2つのシステム、Vita Vionic、Baltic Denture Systemを提供します。https://www.amanngirrbach.com/en/products/full-denture-prosthetics/

Ceramil full denture system

上顎と下顎の精密印象採得後、咬合床が技工所で製作され、歯科医師に試適と顎間関係、スマイルライン、正中線、犬歯の位置の記録、フェイスボウトランスファーのために送られます。

採得されたフェイスボウと中心位記録は、技工所で作業模型をAmann Girrbach Artex articulatorに装着するのに使用されます。作業模型は上下それぞれスキャンされ、咬合堤と顎間関係記録はトランスファースタンドに設置、Ceramill Map400 optical 3D scannerでスキャンされ、ソフトウェアに模型の位置関係をトランスファーできるようにします。

Ceramill D-Flow softwareを全部床義歯の設計のために用います。解剖学的ランドマークを抽出して、排列ラインや上顎人工歯の位置、咬合平面などを計算します。人工歯はKulzer、Vita Vionic Solutions、Merz Dentalの3つの会社から選択する事ができます。ソフトウェアが顎堤情報などから自動的に人工歯を選択します。前歯部は、患者の審美的要求に基づいて技工士が位置を調整することができます。

人工歯排列後に、自動的に歯肉の形態もソフトウェア上でデザインされます。上下顎の床を5軸のミリングマシーン(Ceramil Motion 2)で歯肉色ワックスブロックを使いミリングします。その後ミリングした人工歯をワックス床に設置します。

試適用義歯を患者の口腔内に挿入し、審美性や発音などを評価し、必要に応じて調整します。その後は従来の義歯と同じ行程となります(埋没重合するという意味?)。

従来の義歯と同様な調整を行います。フィットチェッカーまたはPIPなどを使用して適合を調整します。咬合は必要なら口腔内で調整を行います。また、リマウントによる咬合調整も可能です。

Vita Vionic

VitaはAmann Girrbach Ceramil FDSとデジタルデンチャーシステムを統合しました。人工歯と床材料がVita製品で作られる以外はFDSシステムと同様に義歯をデザインします。技工士は歯科医に3つの選択肢を与える事ができます。(a)重合済みPMMAからミリングした白いモノリシック試適用義歯を製作します。試適し、必要なら調整した後で、最終義歯の床部分をピンクのPMMAブロックでミリング、人工歯はVITA denture teethを後で接着し、研磨後に歯科医へ送ります。(b)ワックス床をミリングしてそこにVITA denture teethを排列します。試適を行い、必要なら調整を行います。その後義歯は従来の義歯と同じ行程で完成します。(c)重合されたピンクPMMAディスクをミリングして義歯床を製作。人工歯はもし試適が必要な場合はワックスで固定、試適が必要ではない場合にはVita Vionic Bondで人工歯と床を接着します。

Baltic denture system

The Baltic denture system (BDS)もAmann Girrbach AGとパートナーであり、Ceramil FDSにデジタルデンチャーシステムを統合しています。BDSは2回のアポイントで患者に全部床義歯を提供します。

歯科医はBDKEY Set compnonetsに従い機能印象を取ることができます。上下顎の調整可能な人工歯付咬合床を使います。これは大中小の3つのサイズがあります。口腔内で調整し、上下機能印象を採得する一方、専用のヴァーティカルインディケーターが組み込まれたフェイスボウを上顎にとりつけ顔面正中を記録し、審美的、機能的な要素を患者からCADへ移動します。フェイスボウは歯科医が瞳孔間線とカンペル平面を記録するのに役立ちます。一方で、ヴァーティカルインディケーターは正中線を記録するのに役立ちます。BDKEY LOCKと呼ばれる特別な装置は顎間関係記録の助けになります。人工歯があるので全体的な審美性、リップサポート、排列などを評価する事ができます。人工歯の形態やサイズはミリングする際にコピーするので、試適用義歯の役割も果たします。技工所では送られてきた全ての記録をCeramill Map400 optical 3D scannerでスキャンしてデータを得ます。利用可能なデータのCADデザインは、BDCreatorソフトウェア(Merz Dental GmbH)を使用し作られます。デザインが承認されると、5軸のミリングマシーンで義歯を削り出します。ミリング材料は架橋PMMAでできており、3つのサイズがあります。リンライズドオクルージョンに設定された人工歯と一体でミリングされ、前歯、臼歯は形態、大きさに種類があります。調整方法は従来法と同じです。咬合調整は口腔内またはリマウントで行います。

Dentsply dentures

Dentsplay SironaはCAD/CAM全部床義歯に参入してきた最も新しい会社です。3Dプリント用の新しいレジン(Lucitone Digital Print 3D Denture Resin)を開発しました。彼らのシステムは3Dプリントのみであり、人工歯はIPN 3D Digital Denture Teethという特別にデザインされたものを使用し、プリントされた義歯床と接着するシステムです。プリント時には、接着する人工歯とプリントされた床の間にごく小さな空間ができ、そこに接着剤を入れます。接着工程では、コンディショニング剤を含む薬液で歯を加熱した後に接着剤を塗布し、光重合で人工歯を義歯床に固定します。その後、外部シーラーを塗布し、光重合器で後重合工程を経て完成します。

重合済みPMMAを使用した場合の物性

親水性

いくつかの論文が、重合済みCAD/CAM用PMMAの親水性またはぬれを評価しています。Alammariは加熱重合型レジン、化学重合型レジン、CAD/CAM用レジンのぬれに対する機械的、化学的研磨の効果を検討しました。彼女はCAD/CAM用レジンは他のレジンと比べて最も接触角が小さかった(濡れがよい)と結論づけています。SteinmasselらはいくつかのCAD/CAMレジンを従来型レジンと比較しました。彼らは、従来型レジンと比べて全てのCAD/CAM用レジンは親水性が高かったと結論づけています。AeslanらもCAD/CAM用レジンは従来の加熱重合レジンと比較して親水性が高かったと報告しています。

親水性は義歯の維持力向上に役立つことが昔から知られています。そのため、CAD/CAM PMMAレジンのぬれ性は唾液量の少ない患者の義歯の維持力向上のために選択肢に入るかもしれません。加えて、CAD/CAM義歯の親水性は、従来の加熱重合レジンよりも微生物の付着の影響を受けづらいかもしれません。Al-Fouzanらはこの考えを支持しており、ある研究で、Candida AlbicansのCAD/CAM全部床義歯の付着の減少率は、熱重合型よりも有意に低かった、と報告しています(注:文脈からだと高かったではないといけないと思うのですが、どう読んでも低かったと記載されています。おそらく文章のミスかと思われます)。彼らは、他のCAD/CAMシステムの評価、異なる表面粗さの材料に関して、更なる検討が必要であると示唆しています。

残留レジンモノマー

加熱重合型PMMAレジンの残留モノマーの存在と、それが粘膜に与える不利益についてはいくつか報告されています。CAD/CAM PMMAレジンは高圧、高温で製作されるため、従来の加熱重合PMMAよりもポリマー鎖が長くなり、モノマー変換率が高く、気泡が少なく、自由体積が小さくなります。残留モノマー量を比較した際に、AymanはCAD/CAM PMMAは残留モノマーが少なく、圧力下で重合された結果と結論づけています。対照的に、Steinmasslらによると異なる4種類のCAD/CAM PMMAと従来の加熱重合PMMAのモノマー放出を比較した所、全ての義歯から放出されたモノマー量はかなり少なかったと報告しています。彼らは、モノマー放出量、義歯重量、表面密度について有意差を認めなかった、と報告しています。そのため、モノマーの存在は、人工歯を義歯床と接着するための接着剤によるものか、重合されたディスクの厚みが、ディスク中心部からのモノマーの蒸発を隠してしまうためではないかと主張しています。

表面粗さ

従来法で製作される全部床義歯に引き続き、粘膜面や研磨面は表面が粗くなっています。研磨されていないレジンは、過度な表面粗さによりステインの付着、プラークの集積、微生物の付着などが認められます。

CAD/CAMでミリングした義歯床の表面粗さを報告した研究もあります。ミリングにより粘膜面と研磨面に波紋を作り出し、表面粗さが増加します。波紋のサイズはミリングに使用する器材とプロセスに依存します。研磨面は機械的な研磨をしっかり行う事により表面粗さを低減させることができます。CAD/CAM義歯と従来の義歯とで表面粗さを比較した研究がいくつかあります。結論としてCAD/CAM義歯の方が従来型よりもスムースな表面です。スムースな表面はより親水性が高く、微生物の付着を抑える事が出来ます。

対照的に、異なる3種類の重合されたCAD/CAMレジンの表面粗さを、従来型の加熱重合レジンと、コーヒー浸漬、サーマルサイクル後に比較した研究では、重合されたCAD/CAMレジンの方が高密度で気泡も少なく研磨性も高いのに、有意差が認められませんでした。

生体親和性

Srinivasanらは、重合済みCAD/CAM用PMMAレジンと従来型加熱重合レジンの生体親和性を検討しました。ヒト骨芽細胞、マウス胎児線維芽細胞でテストされましたが、有意差は認められませんでした。

義歯の適合と維持

従来型の全部床義歯の製作法の欠点の1つとして重合収縮があり、義歯の不適合が起こります。

ミリング、プリント、従来型で製作された全部床義歯の適合を比較した研究がいくつか存在します(文献31、44、47-53)。Goodacreらは塡入、プレス、流し込み、射出成形、CAD/CAMで製作した全部床義歯の床の適合について比較検討しました。Geomagic Control 2014を使用して、加工前と加工後のSTLファイルを重ね合わせたところ、どの手法も完璧な義歯床適合を実現できないことがわかりました。しかし、CAD/CAMが最も正確性がよく、再現性の高い製作法であると結論づけられています。

Steinmasselらは、4種類の異なるCAD/CAM義歯用レジンと従来型レジンの適合を比較しました。石膏模型をスキャンして義歯粘膜面のSTLファイルと重ね合わせた結果、CAD/CAM義歯が最も適合が良かったと報告しています。この良好な適合が、なぜ歯科医がCAD/CAM義歯が維持力に優れ、義歯性口内炎が少ないのかを説明しています。他の研究では、CAD/CAM、射出成形、従来型で、粘膜面の適合を口蓋、前庭フレンジ、上顎結節、歯槽堤、後方封鎖部などの部位で比較しています。その結果、唾液が豊富な場合、CAD/CAMまたは射出成形義歯では、口蓋、ポストダムエリアでの適合が従来型よりも向上しました。ミリングして出来る粘膜面の波打ち部に唾液が満たされた結果ではないかと考えられました。最終的に3つの製作法はすべて臨床的には許容内と結論づけられています。

KalbererらはCAD/CAMと3Dプリントされた全部床義歯の適合を湿潤下、乾燥下、湿潤-乾燥サイクル下で比較しました。臼歯部歯槽頂、口蓋、後縁封鎖部、上顎結節、前歯部顎堤などで、CAD/CAM義歯の方がプリント義歯よりも有意に適合が良かったと結論づけています(文献49)。ミリング、射出成形、3Dプリントでの義歯製作の正確性を比較した研究では、Leeらは、ミリングと3Dプリントは射出整形よりも正確性が高いと報告しています。しかし、彼らは3Dプリントは再現性が低く、時間とサポート構造が必要と認めています。

Yoonらは、ミリングと3Dプリントで製作された下顎義歯床の一致性と粘膜適合性を評価しました。彼らは、ミリングの方が3Dプリントよりも優れた一致性だったと結論づけています。しかし、粘膜適合性については有意差はありませんでした。彼らは、プリント義歯では臼歯部顎堤頂と頬棚において粘膜のあたりを認め、臨床的には調整が必要とも報告しています。

Hwangらは、ミリングと3Dプリントで製作された上顎義歯床の一致性と粘膜適合性を評価しました。彼らは、プリント義歯の方がミリング義歯よりも適合が優れていたと報告しています。しかし、スキャンした義歯の粘膜面のカラーマップが示す結論とは一致しないため、結果を解釈する際には注意が必要です。

Tasakaらは、3Dプリントと従来型義歯でのin vitroでの正確性と維持力を比較しました。彼らは3Dプリントの方が正確性、適合共に従来よりも優れていたと報告しています。また、加熱重合型の全部床義歯よりも維持に優れるとも報告しています。ただし、3Dプリント、従来型、ともに収縮が認められたと結論づけています。

McLaughlinらは、CAD/CAM、射出成形、従来型の義歯床で、形態(方形、卵円形、三角形)と口蓋の深さによる効果を調べた結果、浅い口蓋では射出成形とCAD/CAMが従来型よりも優れた適合でした。従来型の義歯では、射出成形で製作した義歯よりも47%スペースが認められました。

ミリングと従来型義歯床の上顎維持力を比較した臨床研究があります。患者の口腔内に装着された義歯床に対して、カスタムミルを用いて垂直荷重を負荷し、義歯床が外れるまでの時間を測定しました。その結果、従来型の床と比較して、有意に高い維持力を示しました。彼らは、患者の主訴が維持であった場合、CAD/CAM義歯がベストな選択になるかもしれないと結論づけています。フォローアップ研究でAlRumaihらは、ミリングと従来型で安定剤の効果を評価しました。同じカスタムミルを使って実験を行い、安定剤があってもなくてもミリングの方が維持力が優れていることを報告しました。しかし、ミリング義歯の方は安定剤使用で維持力が低下することも報告しています(注:この論文は以前読んだことがあります https://www.dentist-oda.com/da_millingdenture2018/)。

人工歯の移動

従来法での義歯製作では、PMMAの重合収縮により人工歯の移動が起こります。また、ミリング義歯でも人工歯をマニュアルで接着する場合には、人工歯が予定していた位置よりもずれてしまうことがあります。両者ともに、リマウントして咬合調整することが平衡咬合を得るために強く推奨されます。

GoodacreらはCAD/CAM義歯(人工歯を接着するタイプとモノリシックタイプ)と従来型(塡入、プレス、流し込み、射出成形)について、正確性と再現性に関して比較検討しました。彼らは人工歯の移動を0にする方法はなかったと結論づけています。しかし、モノリシックが最も小さい移動量でした。彼らは臼歯の方が前歯よりも移動することを報告しています。加えて、彼らは圧縮を伴う製作法が最も人工歯の移動量が大きいと結論づけています(文献62)。

色の安定性とステイン

義歯床の色の変化は、材料表面のダメージと経年変化の徴候です。従来型PMMAを様々な溶液に浸して着色安定性を評価した結果、コーヒーの疎水性にもかかわらず、コーヒー由来の着色剤がPMMAの気泡に深く浸透することが報告されています。Zuoらは4つのブランドの加熱重合レジンを異なる材料(紅茶、赤ワイン、コーヒー、コーラ)に28日間浸漬した結果、全ての試料に様々な程度の変色とステイン付着が認められました。

CAD/CAM義歯をミリングするための重合済みPMMAブロックの使用は、付随的な物性について良い結果になりそうです。Alpらによるin vitroでの研究で、CAD/CAM用PMMAと従来型PMMAの色調安定性について評価しました。彼らは、CAD/CAM用PMMAでは、コーヒー浸漬後サーマルサイクルを行った場合、変色があまりめだたないことを報告しています。CAD/CAM用PMMAの吸水性の低さと親水性の結果によるものと考えられます。重合済みCAD/CAM用レジンは高密度で有り、気泡も殆どありません。

Al-Qarniらは、従来型とCAD/CAM義歯を用いて、レジン歯と義歯床の色調安定性に対するコーヒーとワインの効果を検討しました。彼らは、全ての試料において、コーヒー、赤ワイン浸漬による色の変化に有意差を認めませんでした。しかし、コーヒーは最も着色させやすい材料でした。彼らはCAD/CAM用PMMAと従来型は同程度の色調安定性であり、Avadentのモノリシックミリング義歯では人工歯と義歯床の界面でステインが少ない傾向でした。

弾性係数

Steinmasslらによる研究では、テストした5種類のCAD/CAM義歯用材料のうち4つが化学重合型義歯床用材料よりも有意に高い弾性係数だったと報告しています。また、5種類中3種類のCAD/CAM義歯用材料が過熱重合型義歯床用材料よりも有意に高い弾性係数でした。5種類中2種類のCAD/CAM義歯用材料は、加熱重合、化学重合よりも有意に高い破壊靱性を有していました。高い弾性係数はCAD/CAM PMMAディスクが高熱高圧下で製作される結果と考えられます。結果として、残留モノマーが少なく、分子間力と自由体積が減少します。高い弾性係数は、修理が少なく、破壊靱性が高いためです。

タフで弾性係数が高いということは、特に2mmと厚みが規定されている口蓋部で薄くミリングする事が可能になります。義歯の規定の厚みを付与することは、患者にサイズの小さい、快適で発音もしやすい義歯を提供することができます。

曲げ強さと破壊靱性

CAD/CAM PMMAと従来型の加熱重合型PMMAの曲げ強さと破壊靱性を比較した研究があります。

Pacquetらは塡入、プレス、射出成形、CAD/CAM義歯床用レジンの機械的物性を評価しました。塡入とプレス用のPMMAレジンは高い曲げ強さでしたが、脆さを示しました(注:硬い分壊れやすいと言う意味)。彼らは、CAD/CAM PMMAレジンは他のレジンよりも曲げ強さと破壊靱性の向上が認められ、それは延性が高いことによると結論づけています。

CAD/CAM PMMAと従来型加熱重合PMMAの表面性状と曲げ強さを比較した研究では、CAD/CAMの方が加熱重合型よりも有意に高い曲げ強さを認めました。

CAD/CAM PMMAと加熱重合PMMAの残留モノマー量と機械的物性を調べたAymanの研究では、加熱重合PMMAの方が曲げ強度が高く、弾性係数が低い結果でした。

Al-Dwairiらは、2種類のCAD/CAM PMMAと従来型加熱重合PMMAの曲げ強さ、弾性係数、衝撃強度を比較しました。その結果、CAD/CAM PMMAは2つとも従来型よりも曲げ強さ、弾性係数、が向上していると報告しました。

プリントレジン:摩耗強度と破壊抵抗

Parkらは、クラウンブリッジのプリントに用いるマイクロフィルドハイブリッドレジンについて、重合済みPMMAレジンのブロックと化学的に活性化したPMMAレジンを用いて、ジルコニアと非メタル材料に対して試験したときの耐摩耗性を評価しました。摩耗の最大深度や、損失量には有意差は認められませんでした。著者らは、この結果から3Dプリントに使用するレジン材料は、歯科的な利用では適切な摩耗強度を有していると示唆しました。

Chungらは、3Dプリント材料と従来の既製レジン歯のチッピングと引張り強さをテストしました。著者らは、人工歯の3Dプリントに使用するレジン材料は全部床義歯での使用に適切な破壊抵抗を持っていると結論づけています。

Clinical studies

Kattadiyilらは、歯学部生15名を用いて縦断研究を行いました。歯学部生は15名の患者に2種類の義歯を装着しました。1つは2回のアポイントで完成したAvadentのCAD/CAM義歯で、もう1つは5回のアポイントで完成した通法での義歯です。患者らの満足度の平均スコアはCAD/CAM義歯の方が有意に高い結果となりました。上顎CAD/CAM義歯の維持力は、従来型よりも有意に高い結果となりました。歯学部生はCAD/CAM義歯の方を好みました。著者はCAD/CAM全部床義歯は、教職員の監督下で義歯を製作する学生にとっては、効果的で時間も短縮できるオプションとなりえると結論づけています。

Bidraらは、2回で完成するモノリシックCAD/CAM義歯とインプラント支持オーバーデンチャーについての前向きコホート研究を報告しています。2回完成のモノリシックCAD/CAM義歯を20名の被験者に40個使用しました。被験者は上下顎全部床義歯または、上顎全部床義歯で下顎にインプラントオーバーデンチャーとなっています。維持、安定、床の長さ、全体的な審美性、リップサポート、咬合、発音、研磨、義歯床の適合、粘膜の健康、全体的なアセスメント、適切な咬合高径といった12項目が評価されました。3人がフォローアップできずにロスト、3人がCAD/CAM義歯に満足できず研究から離脱しています。セット後1年間で平均で3.3回(0-10回)の調整が必要でした。臨床的、患者主導型アウトカムでは、2回完成義歯は1年後のフォローアップ時には良い結果でした。しかし、全体的な満足度や評価について、「優れている」、「良い」とする割合は、2名ほ補綴医よりも患者の方が高い結果でした。著者らは、臨床家の時間と労力のかなりの部分が、CAD/CAM義歯製作のためのデジタルプロセスに費やされたためと述べています。

Saponaroらは、被験者48名のCAD/CAM義歯に関する臨床的経験を評価した後ろ向き研究を報告しました。24名は歯学部生によって治療され、24名は卒業した補綴科の学生が治療しました。31名の患者は2回完成、17名は装着時の不具合のため、追加のアポイントが必要でした。5名の患者で従来法での義歯の再製作が必要でした。平均アポイントは2.39回で、セット後の調整は平均2.08回でした。最も多かった不満は維持力の欠如、不適切な咬合高径、不正確な咬合位でした。

Saponaroらは、他にも全部床義歯装着者に新たにCAD/CAM義歯を製作したときの好みと満足度について報告しています。10項目の質問表を50名に送り、回答率は38%でした。新しい義歯はより良いか、咬む能力、スマイル、発音、清掃性、適合、期待どおりの出来だったか、快適さ、将来的に推薦できるか、全体的な満足度の10項目を評価しました。CAD/CAMと従来型の義歯で患者のランク付けに有意差はありませんでした。しかし、回答者の70%がCAD/CAMの方が従来型よりもよいと答えました。CAD/CAMについて全ての項目でポジティブな反応が認められました。

Schlenzらは、10名のCAD/CAM全部床義歯装着者を平均2.54年観察した後ろ向きのパイロットスタディを報告しています。審美的な要件で4回以上アポイントが必要となりました(平均4.6回)。セット後に平均2.07回のアポイントを取っています。セット後のアポイントの主な理由はあたりの存在です。リラインが40%で必要になり、2つの義歯は破折しました。著者らは、CAD/CAM義歯は生存率と維持という観点から臨床的に許容できると結論づけています。また、彼らは技工所により情報提供していれば破折などは避ける事ができたかもしれないと述べています。

CAD/CAM全部床義歯の利点

CAD/CAM全部床義歯は従来の義歯と比較していくつかの利点があります。重合済みのレジンをミリングに使用するため、重合収縮する従来型と比較すると、寸法的に安定で適合も良いでしょう。重合済みレジンは機械的な物性も向上し、口蓋部の厚みを薄くすることも可能です。この特性は即時義歯で顎堤のよい上顎前歯を被覆するときに利点になるでしょう。薄いフレンジは上唇の豊隆を抑え、より審美的な結果となるでしょう。

ミリングされ床の物性が向上するエビデンスは存在します。例えば、より親水性が高い、残留モノマーが少ない、表面がスムースである、表面が汚れづらい、弾性係数が高い、曲げ強さが大きい、破折抵抗が大きい、などがあります。残留モノマーが少ない事に加えて、重合済みミリングレジンは加熱重合より密度が高いという特徴があります。

加えて、患者の来院回数が少なくなります。来院するのが難しいかもしれない高齢者にとっては大きな利点です。遠方の歯科医院まで通わないといけない、交通渋滞が著しい所に住んでいる人などにも有益です。

全部床義歯製作のためのチェアタイムの減少は、全部床義歯治療をより費用対効果が高いものにします。

さらに、デジタルデータの保管は、将来の義歯再製、またはサージカルテンプレートや放射線照射シーネなどに利用できる可能性があります。また、再製した義歯は、外形や排列が同じのため、患者が新しい義歯に適応するのが容易になります。最後にモノリシックミリング全部床義歯と正確な顎間関係記録があれば、CAD/CAM義歯の咬合調整の必要度が下がるでしょう。

CAD/CAM全部床義歯の技工士にとっての利点

CAD/CAM全部床義歯は製作にかかる時間の短縮という点で技工士にとっても有益です。技工ステップが減少し、石膏模型や咬合器なども必要ありません。

デジタルソフトウェアによるデザイニングは、模型の解析をより迅速に、排列をより速く行う事を可能にします。加えて、技工士は歯科医により適合の良い質のよい義歯を提供することができます。

最後に、PMMAレジンによる従来の塡入操作がなくなることにより、モノマーに暴露されることがなくなります。

CAD/CAM全部床義歯の欠点

CAD/CAM全部床義歯は、今の時点で従来型の全部床義歯と比較していくつかの欠点があります。人工歯を義歯床に接着する際に咬合器による調整ができないので、リマウントによる咬合調整が必要になることがしばしばあります。デジタルデンチャーの製作に選んだシステムを使いこなしたと歯科医が思えるようになるまでには、複数のCAD/CAM総義歯を製作する必要があります。このラーニングカーブは理想的な結果よりも低いものになるかもしれません。CAD/CAM総義歯の欠点は、歯科技工所とのコミュニケーションが難しく、設計に関連した問題を解決するために何度も努力しなければならないことです。加えて、材料費や実験料が従来の加工工程より高くつく地域もあります。

CAD/CAMが環境に与える影響も無視できません。ミリングの手順ではレジンの粒子が発生し、環境のプラスチック汚染の一因となります。同様に、シリコーン印象材は生物分解性ではありません。さらに、義歯の包装や発送には、国際的な通関手続きが必要となるため、ロジスティックスにも配慮が必要です。

まとめ

重合済みレジンディスクを切削加工するCAD/CAMデンチャーの物性というのは従来型と比較するとかなり良さそうです。ただし、モノリシックでなければ人工歯を後で接着する事になりますので、そこでズレが生じる可能性が起こり、咬合調整はリマウントが要求される事が多いようです。リマウントする、ということはチェックバイトできないといけないのですので、Boucher法で顎位を決めるスキルが必要になりそうです。

また、2回で完成する方法などは、印象と咬合採得を同時に行いますので、そこら辺、うまく咬合採得できるのか?顎位を間違えたりしないのか?ということが心配です。どのシステムを使うかで難易度が変わりそうです。自分は試適は絶対すると思うので、2回法ではなく3回法で作ることになりそうです。

今後は当分デジタルデンチャーについての論文を読んでいこうと思っています。

この記事を書いている人 - WRITER -
5代目歯科医師(高知市開業)
東京医科歯科大学卒業(47期)
同大学院修了
【非常勤講師】
徳島大学
岩手医科大学

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